CCS特集2019年夏:化学情報協会

化学名を正確に機械翻訳、英中特許・文献など和訳

 2019.06.21−化学情報協会(JAICI)は、中国語/英語特許調査支援サービス「AutoTrans」をさらに機能強化する。一般的な機械翻訳が化合物名を不得意としているのに対し、JAICI独自の化合物表記翻訳技術を組み込んだことで、抜けや崩れのない正確な化合物名称を日本語にすることができる。とくに、中日翻訳に関しては、きわめて高い翻訳率を誇るという。ネット経由で注文して日本語訳が納品されるサービスで、一つのユーザーIDで複数人が活用できる(同時アクセスは不可)ため、社内で共用利用しやすいことも特徴となっている。

 AutoTransは、情報通信研究機構(NICT)が開発しているニューラル機械翻訳エンジン(NMT)を採用し、特許を深層学習させた翻訳エンジンと、科学技術文献を学習させたエンジンとを使い分けることで翻訳品質を高めているほか、原文をあらかじめ編集し、長い文章を短く分割したり、箇条書き部分が崩れないようにしたり、数値抜けを防ぐ事前策を講じたりするなどの前編集プログラムを活用している。

 昨年1月にサービス開始して以来、メニューを順次増やし、現在は6種類の翻訳機能を提供。大量の外国特許を効率良く読みたい、文献抄録や論文・技術文書をまとめて和訳したい、海外の提携先などからの英語資料を手早く訳したい、などのニーズに応えて好評を得ている。

 具体的にサービスメニューをみていくと、まず「PatSpread翻訳」は、特許番号を指定すると、その特許全文と、同じレイアウトで仕上げた和訳全文を納品するサービス。レイアウトを合わせているため原文と訳文の比較対照が容易で、エンドユーザーである研究者からの依頼が多い。発注した全特許の書誌情報の一覧をエクセルファイルにまとめて提供することも便利だと評価が高い。

 また、6月から新たに追加された「DocSpresd翻訳」は、PDF、ワード、パワーポイントの英語ファイルを和訳するサービス。文書中の図表、上付き/下付き文字、段落にまたがる文章の連結など、原文そのままのレイアウトで翻訳される。SciFinder-nの検索結果ファイル(PDF)も和訳することが可能。JAICI化合物表記翻訳技術を採用しているため、化学系文献の翻訳に最適で、大学関係や企業の研究者の利用を期待しているという。

 さらに、STTNやSciFinderで特許検索などを行い、その検索結果ファイルをアップロードして、翻訳結果をダウンロードする「ファイル翻訳」、ユーザーがエクセルにまとめた抄録・文献一覧などのワークシートに和訳を付与(ワークシートに和訳列を挿入)する「汎用ワークシート翻訳」、一度に最大1,000行の翻訳に対応する「汎用ワークシート翻訳1000」、ブラウザーに任意のテキストを貼り付けて翻訳結果をオンデマンドで得る「テキスト翻訳」(英中を含めた29言語に対応)も提供している。このうち、汎用ワークシート翻訳は、企業の知財部門が特許情報のスクリーニングに利用したり、社内データベースに取り込むための準備に利用したりすることが多い。

 サービスの利用形態は、年間契約の一般会員と、月額課金の従量会員に分かれる。一般会員は1契約で5つのIDが与えられ、一定の利用上限までは定額。無料トライアルも受け付けている。


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