CCS特集2019年夏:JSOL

外部連携で実用性を向上、最新版で深層学習機能搭載

 2019.06.21−JSOLは、CAEソリューションの一環として材料物性解析ソフトウエア「J-OCTA」の開発・販売を推進してきている。ゴム・プラスチック・薄膜・塗料・電解質など多岐にわたる材料開発において、原子・分子のミクロスケールから、特徴的な材料物性があらわれるメソスケールまでをシミュレーションする国産ソフトとして長年の実績を持つが、近年ではマテリアルズ・インフォマティクス(MI)への注目の高まりとともに各方面で評価が高まっている。

 J-OCTAはもともと国プロジェクトで開発されたシステムがベースで、メソスケールを解析するための独自プログラムを各種統合しているが、最近実用性が高まったのは外部プログラムとの連携がさらに広がったことが大きな要素となっている。例えば、分子動力学ソフトでは、海外製で利用者が多いLAMMPSとGROMACSに加え、J-OCTA最新バージョン5ではHOOMDにも対応させる。これはミシガン大学で開発されたもので、GPU(グラフィックプロセッサー)対応が特徴となっている。

 また、密度汎関数法ソフトSIESTAとの連携も強化する。これまでは、SIESTAで無機/有機界面のエネルギーを計算し、そこから分子動力学計算に必要なポテンシャルパラメーターを求めるなどの使い方が中心だったが、今後はSIESTAのさまざまな機能をJ-OCTAで利用できるようにインターフェース機能を拡張する予定だ。

 さらに、フラグメント分子軌道法ソフトABINIT-MPを利用して、粗視化シミュレーション用の有効相互作用(χ)パラメーターを算出するFCEWSもバンドルして提供中。計算は自動化されており、分子構造を用意するだけで、ABINIT-MPの入力ファイル生成、計算結果の回収、χパラメーターの算定を1コマンドで実行できる。

 一方、MIの関連で注目されているのが機械学習を用いた物性推算機能である。J-OCTAには定量的構造物性相関解析(QSPR)機能が実装されているが、バージョン5で深層学習への対応を実現する。分子構造と物性(計算結果)との関係を深層学習させることができる。また、昨年のユーザーフォーラムでは、慶應義塾大学の泰岡顕治教授との共同研究として、短時間のシミュレーションデータを用いて長時間のデータを再現するために機械学習を活用する手法が紹介された。分子動力学計算時間を10分の1に短縮する効果があるしており、機械学習の応用は今後ますます広がりそうだ。

 同社では、J-OCTAの海外での普及にも力を入れており、昨年は中国、韓国、台湾、インドでセミナーを実施。現地での営業活動も活発化している。


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