CCS特集2019年夏:TSテクノロジー

年内に本社を東京へ移転、遷移状態DBの事業化に力

 2019.06.21−TSテクノロジーは、山口大学発ベンチャーとして設立後、順調に事業を拡大し、第10期を経過、年商1億円の大台に乗せた。今年、本社を東京に移転する計画で、研究受託を中心とした計算事業をさらに発展させていく。

 同社の売り上げは、計算事業が半分を占めており、科学技術計算に適したPC販売、またアマゾン・ドットコムに「サーバー屋」の商号で出店している通販事業などで構成されている。計算事業は、決まったメニューの計算をネット経由で受注・迅速に結果を返す「クイックオーダー」から、テーマに即してきめ細かく対応する受託研究型の「フルオーダー」、一定期間の専従体制で研究協力する「包括連携契約」(FTE契約)まで、ニーズに応じた幅広いサービスを用意している。

 最近ではとくに包括連携契約が好調であり、事業全体の牽引車の勢いで実績が伸びているという。計算事業全体では関東の顧客が9割となっており、さらに充実したサポートを提供するため、本社を東京に移転することを決めた。すでにオフィスの選定を行っており、遅くとも年内には東京進出を果たす。

 また、今回の体制変更を機に、ユニーク技術である化学物質の遷移状態データベース「TSDB」の本格的な事業化にも乗り出す。これは、同社の母体ともいえる山口大学・堀憲次教授の研究室で開発されたもので、遷移状態に関する量子化学計算結果を蓄積し、時間のかかる計算をあらためて実行することなく、化学反応解析や合成経路開発を効率的に行うことが狙いとなっている。

 これまでも着実に開発を継続してきていたが、スポンサーとなる企業があらわれたことでユーザーインターフェースなどの開発を加速し、商用データベースサービスとして1〜2年以内に外部に公開することを目指している。パートナーであるクロスアビリティの分子モデリングソフト「Winmostar」にTSDBとの接続機能を用意するなど、さまざまな検討を進めているという。

 一方、PC販売事業は「NGXシリーズ」の名称でオリジナルデザインのマシンを提供しているが、ウェブ上で見積書(PDF)をダウンロードできるようにするなど利便性を高めたうえで、あらためて販売強化する方針。本社を東京に移転すれば、現地への設置などサービスも充実すると期待される。


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