2019年冬CCS特集:アフィニティサイエンス

AI創薬で新事業を開始、標的に結合する構造デザイン

 2019.12.03−アフィニティサイエンスは、インテージヘルスケアおよび理論創薬研究所と共同でそれぞれのノウハウを結集し、インシリコ創薬支援サービス「ACISS」を展開している。今回、新しいメニューとして、AI創薬プラットフォーム「Deep-Quartet」を開始した。人工知能(AI)を利用した実践的創薬技術として提案しており、深層学習、機械学習などを組み合わせた化学構造のデノボ(de novo)デザインを行う。

 同社は、創薬研究や材料開発のためのソフトウエア販売を中心に手がけるベンダー。ファーマコフォアに基づくインシリコスクリーニング用統合ソフト「Ligand Scout」(オーストリアのインテ・リガンド)、多数の分子記述子計算やフィンガープリント計算を行う「alvaDesc」(伊アルバサイエンス)などの製品の実績が大きい。とくに、alvaDescは機械学習と親和性が高いことで注目されており、PythonやKNIMEと組み合わせて利用することが可能。計算量が多い場合は、計算科学振興財団が運営するFOCUSスパコンが利用できるように準備されており、12月には初心者向けの講習会を開催する予定である。

 「ACISS」は、顧客の創薬テーマや重点領域に合わせたインシリコ創薬のための戦略立案から、3社の技術を持ち寄って実施する受託インシリコスクリーニングまで、幅広いニーズに対応するが、今回の新サービス「Deep-Quartet」はAI創薬に焦点を当てたもの。標的タンパク質に結合する医薬候補化合物の構造を強化学習などを駆使して構築することを目的としている。具体的には、ChEMBLなどミリオン級の化合物ライブラリーを利用し、SMILES形式でドラッグライクな構造を持つ文字列を発生させる。その後、「Ligand Scout」の結合スコアが高くなるように強化学習を実施、相互作用マシンラーニング法(CGBVS)による「CzeekS」でフィルタリングし、候補化合物を絞り込む。すでに3社共同で学会発表なども行っており、Gタンパク質共役受容体(GPCR)などで成果が出ているということだ。

 一方、その他のソフトウエア製品では、DNAシーケンスデータ解析ソフト「PeakTrace」(豪ニュークレイクス)の実績が伸びている。サンガー法によるシーケンシングの読み取り品質と塩基長配列を改善できる。無料のビューワーソフト「Chromas」(豪テクネリシウム)と併用するのが便利だという。高機能の有償版「ChromasPro」の販売も行っている。さらに、GPU専用分子動力学プログラム「ACEMD」(英アクセレラ)にお試しサービスが導入されて評価しやすくなっているほか、アドバンスソフトが開発している材料解析統合GUIソフト「Advance/NanoLabo」の販売権も取得した。密度汎関数法による固体電子構造計算プログラム「WIEN2k」(ウィーン工科大学)と組み合わせることを考えているという。


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