富士通九州システムズが「SCIGRESS」事業を軌道に
来年4月にメジャーバージョンアップ、MI対応QSPR機能を搭載
2019.12.03−富士通九州システムズ(FJQS)は、今年度に富士通からビジネス移管された計算化学統合プラットフォーム「SCIGRESS」の事業を軌道に乗せつつある。移管を前に前年度は開催を控えていた計算化学セミナーや体験ワークショップを再開させ、年度内にはマイナーバージョンアップも実施。さらに来年4月、バージョン3に機能強化し、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)への応用を想定したQSPR(構造物性相関)機能を搭載する。
SCIGRESSは、FJQSの子会社であるFQSポーランドが開発している製品であり、今回のビジネス移管で開発から販売までを一貫して行える体制になった。年度内にリリース予定のバージョン2.9.1はマイナーバージョンアップの位置づけで、バグフィックスのほか、分子表示の改善、ラマン計算への対応などが実施される。目玉は来年4月のバージョン3.0で、約10年ぶりのメジャーバージョンアップとなる。
とくに、化学・材料研究におけるMIは、学習に利用するための実験データが不足していることが問題となっている。このため、SCIGRESS 3.0では、シミュレーション結果(誘電率、弾性定数、分極率など)をQSPRの記述子として利用することで物性予測を可能にする機能を搭載。構造と物性との相関関係を解析してモデル式を作成し、フィッティングを行って予測モデルを構築、実際に物性予測を行うまでを自動化することを目指している。
また、オープンソースソフトウエア(OSS)との連携機能を強化し、Quantum ESPRESSOによる拡散係数とラマンスペクトル計算、GAMESSの入力ファイル編集機能を追加し、より多くの機能をSCIGRESSで利用できるようにしていく。さらに、材料系の大規模計算に対応するため、OSSの並列計算がマルチノードに対応できるように機能を拡張する計画だ。
プロモーション活動としては、今年7月から無料体験ワークショップを復活させたほか、応用物理学会や分子シミュレーション討論会など学会への参加も再開。10月にはSCIGRESSセミナーと体験ワークショップを都内で開催し、20人ほどの参加者を集めた。当日は、富士通研究所からの招待講演「低熱伝導率Si/Ge積層構造の設計におけるMI活用事例」も行われた。「計算負荷はできるだけ軽くすべきで、時間的な制約と精度のバランスを考え、最後は実験で詰める戦略がリーズナブル」「電子状態計算をMIで本格的に取り入れるのは量子コンピューターに期待する方がいい。富士通のデジタルアニーラにも使いどころがある」など示唆に富む内容だった。
今年度の体験ワークショップは、東京と福岡に限られたが、来年度は東京、大阪、名古屋、福岡で定期的に開催していく予定。5月、8月、11月のサイクルを考えているという。
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<関連リンク>:
富士通九州システムズ(ライフサイエンスソリューションのページ)
https://www.fujitsu.com/jp/group/kyushu/solutions/industry/lifescience/
富士通九州システムズ(SCIGRESS製品紹介ページ)
https://www.fujitsu.com/jp/group/kyushu/solutions/industry/lifescience/scigress/index.html