マイクロソフトとノバルティスがAI活用で協業
新薬開発のプロセス変革、黄斑変性症など目標に
2019.10.17−マイクロソフトとノバルティスが、新薬開発への人工知能(AI)適用で協業した。創薬研究や臨床試験、製造、運用、財務など、医薬品開発のさまざまな段階に潜む課題に対処する方法を、AIを応用することで模索することが狙い。データサイエンティストではないノバルティス社員が自在にAIを駆使し、大量のデータに隠された洞察を得ることができるようにするという。新薬開発領域で具体的な三つのターゲットも定めており、その成果が注目される。
画期的な新薬に関する近年の発見は、大量のデータを新たな方法で分析することから得られる側面が大きい。このため、新薬開発は生物学や化学の問題にとどまらず、AIやデータ科学の課題としてとらえられるようになってきた。
例えば、デジタル化された健康情報が急激に増加し、健康を改善する機会が開かれているにもかかわらず、大量のデータを理解することが難しい。さらに、情報の多くは実験ノートや専門雑誌の記事、臨床試験の報告書など、非構造化データとして存在しているため、すべてのデータをまとめて解析することが非常に困難になっている。これらはまさにデータ科学上の課題だ。
今回両社は、マイクロソフトのAIソリューションを日常的に使用して、ノバルティス社員が大量の情報を分析し、新薬の発見に重要となる新たな相関関係やパターンをみつけることができるようにする。データ科学の専門知識を持たない全社員が利用することを目指しており、新たな化合物の可能性を探る研究者や、投与量を把握しようとする科学者、結果を測定している臨床試験の専門家、サプライチェーンの効率化を模索している運用マネジャー、さらには効果的な意志決定を目指すビジネスチームに至るまで、全社員をAIでエンパワーメントすることが最終的なビジョンとなっている。社員が新たな課題に取り組んだり、新しいAIモデルを開発したりすることにより、インテリジェンスが社内に広がり、新薬開発プロセス全体に良い影響が及ぶことを期待しているという。
また、今回の協業では、具体的なテーマも三つ設定している。ひとつは、不可逆的失明の主な要因とされている黄斑変性症に対するパーソナライズド医療。二つ目はAIを使って新しい遺伝子の製造や細胞療法をより効率的にすることで、まずは急性リンパ性白血病をターゲットにしている。三つ目は、AIを駆使して新薬の設計時間を短縮すること。マイクロソフトが開発したニューラルネットワークを使用して有望な化合物を自動的に生成し、スクリーニングや最終的な候補の絞り込みまでを自動化する。共同研究の範囲は、成果次第で今後拡大する可能性もあるようだ。
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