米CASが「SciFinder-n」の逆合成解析に新機能

予測反応を含む合成スキームを提示、AI応用で新規ルート

 2020.01.18−米ケミカルアブストラクツサービス(CAS)は13日、科学者向け情報検索ツール「Scifinder-n」に新しい逆合成機能を追加し、正式に提供開始したと発表した。人工知能(AI)技術と、CASが蓄積した1億2,100万件の反応情報を融合させ、未知で新規な反応ルートを予測できるようになった。新規化合物の合成、反応のスケールアップ、化学合成に関するブレークスルーのチャンスの特定など、研究開発パイプラインの重要なステップを迅速化する効果が期待される。

 SciFinder-nの逆合成解析ツール「Retrosynthesis Planner」は、ジョン・ワイリー・アンド・サンズが開発したChemPlannerをもとにした機能。第1段階として、既存の反応データベースを検索して合成ルートを組み立てる機能が提供されてきたが、この場合はデータベースにない新規化合物に対応することはできず、知られていない合成ルートを提示することもできなかった。

 これに対し、今回新たに提供されたのが、化学反応のルールを知識化して理論的に予測を行う機能。これにより、既知反応と予測反応を混在させた反応スキーム全体を構築して提示する機能が実現した。化学構造の中で切断したい結合や保護したい結合、さらに適用したい反応ルールの種類(エビデンスの多い一般的な反応を重視するか、理論優先で新奇な反応を重視するかなど)を指定して前駆体を予測する。収率やステップ数、反応のコストを考慮でき、任意の反応ステップも組み換えも自由に行える。

 既知の反応情報に基づくルートは「赤」、予測反応によるルートは「青」で色分けされて表示されるため、全体の合成スキームの中でどれが予測反応なのか確認しやすい。また、予測のもとになった化学反応のエビデンスを確認することが容易で、レビューしやすいことも特徴となっている。合成ルートのダウンロードや、ユーザー間の共有も可能。

 現在は、もとのChemPlannerの予測機能がそのまま使われているが、今後はCASが持つ反応情報をもとにさらに反応ルールを抽出し、知識ベースを拡充していく予定。予測機能は継続的に強化されていくことになる。ベータテストでは、7割以上のユーザーが「新規化合物の実行可能は合成ルートを立案できる」「合成ルート立案にかかる時間が短縮される」「より革新的な合成ルートにたどり着ける」と回答したというが、研究現場での実用性がどう評価されるか興味深い。

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<関連リンク>:

化学情報協会(SciFinder-n 製品情報ページ)
https://www.jaici.or.jp/scifinder-n/


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