PwCコンサルティングが3Dプリンティングに関する市場レポート

金属製の拡大で300億ドル超へ、日本と世界に極端な温度差

 2020.01.25−PwCコンサルティングの戦略コンサルティングチーム“Strategy&”は22日、3Dプリンティング、Additive Manufacturing(付加造形・積層造形)の成長性に着目した調査レポート「3Dプリンティングの未来:価値創出とビジネスモデル変革の可能性」を作成したと発表した。市場規模は2018年で85億ドルだが、2028年には300億ドルを超えると予想。とくに、航空宇宙、医療、自動車分野における成長率が高く、素材も樹脂に加えて、金属が大きく伸びるという。ただ、グローバルの動向に比べて、日本国内市場の動きは鈍く、このままではデジタル技術をフル活用する欧米との格差がさらに開くと危惧している。レポートの日本語版には、国内向けの提言をまとめた「終章」が付加されている。

 3Dプリンティングは、1980年代から発達した技術で、光硬化性樹脂による光造形として試作(プロトタイピング)目的で使われることが多かったが、最近では使用できる材料(樹脂、金属、ガラス、セラミック)やプリンティング技術が進歩し、最終製品の量産に使われることも増えている。レーザープリンターの原理を利用したレーザー焼結法(SLS)/レーザー溶融法(SLM)、インクジェットプリンターと同じ原理の熱溶解積層法(FFF)などがよく用いられているという。

 その利点は、加工方法(金型、切削など)に制限されず設計の自由度が高いこと、複雑な形状の製品を低コストで製造できること、ロット数にかかわらずコストが一定なこと、装置がコンパクトなのでどこでも自由に生産できること、材料をムダにせず循環経済を促進することなど。とくに、成長率が高い用途分野として、宇宙航空産業は2015年の4億3,000万ユーロが2030年には95億9,000万ユーロへ年平均成長率23%で増加するほか、医療分野は同じく2億6,000万ユーロから55億9,000万ユーロへ同23%、自動車関係も同じく3億4,100万ユーロから26億1,000万ユーロへ同15%で成長するとしている。

 具体的な事例としては、航空機のジェットエンジン用噴射ノズルを3Dプリンティングで製造した事例がある。それまでは、18種類の部品を調達して組み立てていたが、3Dプリンティングはこれを一発で造形しただけでなく、25%の軽量化を達成し、製品の耐久度も5倍に向上したという。医療分野では、オーダーメードのインプラントに利用されているようだ。

 また、補修用部品をストックしておく負担がメーカー/ユーザー双方で大きいと認識されていることから、必要なときにオンデマンドで部品を製造する需要が増加すると予想し、一つの章を割いてレポートしている。今後5年以内に、補修部品サプライヤーの85%以上が事業に3Dプリンティングを取り入れることで、リードタイムの短縮、コスト削減が見込まれるという。ドイツの補修部品サプライヤーでは、10年後に年間支出を30億ユーロ削減できると予測している。

 さて、日本市場については、3Dプリンティングに対して世界とはかなりの温度差があるという。そこで、今回のレポートでは、古いイメージにとらわれず、3Dプリンティングの最新状況を理解し、その価値を正確に認識すること、次に自社の競争要因や事業課題を見極め、3Dプリンティングがそこにどう当てはまるかを考え、最後に綿密な計画を策定し実行することが必要だと提言している。

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<関連リンク>:

PwCコンサルティング(本レポートへのリンク)
https://www.strategyand.pwc.com/jp/ja/publications/report/future-of-3d-printing-jp.html

PwCコンサルティング(Strategy& のトップページ)
https://www.strategyand.pwc.com/jp/ja.html


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