中外製薬がDX戦略のデジタル基盤にAWSを採用

革新的新薬創出へデータ統合、オープンイノベーション推進も

 2020.07.18−アマゾンウェブサービスジャパンは15日、中外製薬が全社データ利活用基盤として整備中の「Chugai Scientific Infrastructure」(CSI)に、クラウドのアマゾンウェブサービス(AWS)が採用されたと発表した。中外製薬は、デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の一環として、個別化医療の実現やアンメットメディカルニーズ(UMN)への対応を目指し、オープンイノベーション型の研究開発環境を充実させていく。

 中外製薬は、革新的新薬の創出を目指し、2020年末までに社外の研究組織と100件の共同研究プロジェクトを運用可能な研究開発環境をCSI上に整備する計画。全社データ利活用基盤であるCSIにAWSを採用することにより、アカデミアや医療機関、パートナー企業など外部との共同プロジェクトをセキュアに推進することができるようになる。創薬から開発、患者アウトカムに至るプロセスをデータで可視化し、革新を図っていく。

 同社のDX戦略は、「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」として具体的なコンセプトが明示されている。「デジタル基盤の強化」「すべてのバリューチェーンの最適化」「革新的新薬の創出」の3つの基本戦略により、革新的新薬を核としたイノベーション創出による社会および自社の発展加速を目指すことが目的となっている。このうち、全体を貫くデジタル基盤がCSIであり、この上ですべてのバリューチェーンを効率化し、創薬プロセスの革新(AIの活用など)や開発プロセスの革新(リアルワールドデータの活用、バーチャル試験など)、患者アウトカムの可視化による医薬品の新たな価値証明(デジタルバイオマーカーなど)、医薬品の差別化につながる付加価値の創造、疾患理解による新たなUMNの発掘など、デジタル駆動による革新的な新薬創出を狙っていく。

 とくに、CSIによって、社内データの部門横断的な活用の促進、アカデミアや病院との共同プロジェクトを迅速に推進する研究環境の提供、標準化・共通化・自動化によるコスト削減・開発期間短縮、高いセキュリティが要求されるデータの安全な取り扱い、情報流出・外部攻撃などからの安全性リスク低減−を実現する。テクノロジー的には、AWSをプラットフォームとし、インフラ構築自動化ツール「Ansible」、課題管理プロセス管理ツール「Atlassian Jira」、インフラ自動構築用スクリプト管理ツールとして「Git Hub」を採用している。

 AWSの採用に当たっては、短時間で環境構築ができることやスケーラビリティーに優れていることのほか、他のクラウドサービスよりもログ取得可能なレベルが深く細かいこと、コストが毎年一定程度下がること、エンジニアのコミュニティ活動が活発なことなどを評価したという。パートナー企業もAWSを採用していることが多く、ノウハウがあったことも理由だったとしている。当面の利用としては、医療機関などから提供される臨床データを機械学習に利用するほか、共同研究先とのアプリケーション開発などをAWS上で行っていく。

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 製薬業においては、規制対応が重要視されるが、AWSでは「AWS製品をGxP関連システムにおいて使用する際の考慮事項」「医薬品医療機器等対象企業様向けAWS利用リファレンス」といったガイダンスを用意し、製薬業のDX推進を支援している。

 創薬研究、臨床開発、製造、営業・マーケティングなどの製薬バリューチェーンのすべての段階を網羅しており、それを支援するパートナー企業も多数抱えている。AWSを採用するメリットとしては、データ共有、データ解析、ログ機能などすぐに利用できるサービスが用意されていること、外部連携やゲノム解析、ハイパフォーマンスコンピューティングなど、利用に応じたスケールアップが容易なこと、管理や運用の負荷が軽減され、重要性の高い業務に専念できること、開発や評価を低コストかつ迅速に実施できること、業界特有のセキュリティやコンプライアンスに対応していること、ユーザー・パートナー・エンジニアの活発なコミュニティがあること−があげられるという。

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<関連リンク>:

中外製薬(CHUGAI DIGITAL のページ)
https://www.chugai-pharm.co.jp/profile/digital/index.html

アマゾンウェブサービス(トップページ)
https://aws.amazon.com/jp/


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