2020年夏CCS特集:分子機能研究所

新型コロナの研究で成果、大規模仮想スクリーニング

 2020.07.15−分子機能研究所は、独自のノウハウで計算化学を駆使し、ストラクチャーベースドラッグデザイン(SBDD)のための統合ソフトパッケージを開発しているほか、専門的な立場からの受託研究・受託計算サービスも合わせて提供している。

 同社は、米ハイパーキューブの統合分子モデリングソフト「HyperChem」をベースに機能を拡張。「Homology Modeling for HyperChem」(HMHC)と「Docking Study with HyperChem」(DSHC)の2製品を販売している。これらのソフトを利用し、独自の研究活動も行っており、今年5月に新型コロナウイルス感染症に対する医薬候補化合物を探索した成果が論文発表(FEBS Openbio誌)されている。

 これは、生物活性データベースChEMBLに収録されている150万化合物を、コロナウイルスを構成するメインプロテアーゼ(Mpro)を標的にバーチャルスクリーニングしたもの。高速な「rDock」と精度の高い「AutoDock Vina」という2種類のドッキングプログラムを利用し、既存薬64品目と、結合親和性が高い28化合物を発見、論文中で詳細なリストを公表している。現在、FEBS誌の最も読まれた論文ランキングで3位に入っており、反響は非常に大きいようだ。同社では、実際にアッセイをして効果を検証できる共同研究先を広く募集したいとしている。

 また、インシリコ創薬受託サービス「MFDD」においても、大学と民間企業から新型コロナ関連でいくつかの研究を受託しているという。単純な計算だけの要望には、低料金の受託計算サービスで対応できることも利点となっている。

 一方、ソフトの機能強化も継続して進めており、「DSHC」には、rDockがSDF形式で出力したドッキング結果を解析・閲覧し、ヒットを絞り込む機能を搭載した。また、「HMHC」は分子動力学ソフトNAMDとの連携を強化し、入力ファイルの作成と出力ファイルの読み込みを可能にしている。


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