2020年夏CCS特集:モルシス
創薬モダリティで注目、材料開発で量子化学を活用
2020.07.15−モルシスは、菱化システム(現在の三菱ケミカルシステム)から経験豊かなスタッフを含めてCCS事業を継承。加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)の統合計算化学プラットフォーム「MOE」を主力にしながら、生命科学と材料科学の両分野におけるモデリング&シミュレーション、研究情報管理のためのインフォマティクスソリューションを多数の海外ベンダーから調達し、販売・サポートしている。
MOEは創薬研究向けのモデリングソフトとして確固とした地位を築いており、中国や韓国でもユーザーが増加。最近では、抗体医薬品設計やPROTAC(タンパク質分解誘導キメラ分子)開発など、新しい創薬モダリティに対応した機能でさらに注目を集めている。毎年国内のユーザー事例を紹介するMOEフォーラムが9月に予定されており、今回はウェブ経由での開催になるが、これを生かして同時通訳を入れ、アジア各国のユーザーにも配信することを計画している。
また、西ケモターゲッツの薬理活性・安全性予測プラットフォーム「CLARITY」に力を入れる。医薬品の薬理情報と安全性情報の検索、FAERSデータ検索、医薬品の母核置換支援、新規化合物の活性・安全性予測など、薬化学者が必要とする機能が凝縮されている。さらに、西バイオインフォゲートの「OFF-X」は、医薬品のターゲット(分子作用機序)と有害事象で分類した包括的な医薬品安全性アラートサービス。医薬品1万7,000、ターゲット1万5,000などにおける安全性アラート情報の収録数が73万6,000件を超えている。新型コロナウイルス感染に関連した情報は無償公開(毎日更新)されており、注目度が高い。
一方、材料科学系では、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)で計算機シミュレーションのニーズが拡大。ユニークな物性の計算が可能になってきているためで、例えば量子化学計算ソフト「ADF」(蘭SCM)を使って、有機EL用のメタルフリー発光材料として注目されている熱活性化遅延蛍光(TADF)に関係する項間交差の計算が可能。また、同じく量子化学計算「TURBOMOLE」(仏ダッソー・システムズ)の最新版では、多層光記憶媒体や生体深部イメージングなどに利用される材料特性の評価に有効な二光子吸収計算に対応した。密度汎関数法(DFT)よりも高精度なカップルドクラスター法(CC2法)を利用している。このように、量子化学で重要な光化学特性が予測できるようになったことが大きい。
さらに、古典力学にも根強い信頼がある。こちらではモデルの複雑性が増しており、材料設計支援システム「SciMAPS」(仏サイエノミクス)を利用して、架橋分子膜と液体などの界面構造、内部に原子・分子を取り込んだ内包ナノチューブなど、複雑な構造をモデリングし、適切な力場を使用して高精度な計算を実現する例が増えている。力場開発ツール「ダイレクトフォースフィールド」(米イーオンテクノロジー)を使用するのも有効である。