2020年夏CCS特集:ウェイブファンクション

天然物構造決定を自動化、ユーチューブ活用し講習会

 2020.07.15−ウェイブファンクションは、化学者が使いやすい分子モデリングソフト「Spartan '18」を販売している。16コアまで使用できるパラレルスイート版を中心に、大学関係で多く利用されており、新型コロナウイルス感染の拡大でキャンパスへの立ち入りが制限される中、在宅でも計算ができるように準備した特別ライセンスには150件以上の申し込みがあったという。

 Spartan '18は、シングルコアとパラレルスイート、コア数無制限のパラレルスイートGt16−の3種類のパッケージが用意されている。とくに、弘前大学の橋本勝教授らとの共同研究に基づく「NMRレシピ」機能への関心が高い。これは、分子量が大きく配座の自由度が高い天然物の構造決定を効率的に行うためのもので、多段階の計算プロセスを自動化している。高速な分子力学と高精度な量子力学を使い分けながらエネルギー計算と構造最適化計算を繰り返しながら候補を絞り込み、最終的に量子力学でNMRの化学シフトを求める。

 昨年7月には、橋本教授と同社のウォーレン・ヒーリー社長(カリフォルニア大学名誉教授)らの共著で、論文が米国化学会の「Journal of Natural Products」誌に掲載された。タイトルは、「Eficient Protocol for Accurately Calculating 13C Chemical Shifts of Conformationally Flexible Natural Products : Scope, Assessment, and Limitations」。次期バージョンのSpartan '20にはその後の研究成果を含めた最新の機能が盛り込まれる予定で、順調にいけば今秋の米国化学会(ACS)で何らかの情報が発表されるという。

 さて、同社では今年4月にホームページのデザインを一新。英語と日本語のデザインを統一し、コンテンツの充実を図っていく。とくに、日本支店ではYouTubeで講習会の動画などを公開中。橋本教授によるNMRレシピ機能の解説動画をみることもできる。大学関係では研究室の新人研修などの目的で講習会のニーズがあるが、現在は3密を避けるために講習会開催を控えていることから、新しいサイトで多くの動画がみられるように準備を進めている。また、リモートでの講習への要求にも可能な限り応じているという。


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