LINCが最終報告会、来年4月から新体制で再始動

50以上の新規テーマ集まる、既存の開発成果も開示へ

 2020.09.29−AI創薬の社会実装を目指すライフインテリジェンスコンソーシアム(LINC)は、23日から25日の3日間にわたり、プロジェクトの総括となる全体報告会をオンラインで開催した。2016年11月からスタートした活動はこれで終了。開発成果である約30種類のAIを開示するプラットフォームも完成し、10月15日から会員企業は自由に利用できるようになる。そして、来年4月からはポストLINCとしての活動がスタートする。開発テーマを再選定し、法人化して組織・運営体制も刷新するという。これからの活動も引き続き注目される。

 最終報告会の冒頭で、代表の京都大学大学院医学研究科・奥野恭史教授は、「今年2月の報告会が新型コロナの感染拡大で中止になり、この半年間は思うように活動できないもどかしさもあったが、一つの節目を迎えることができた。ここで総括して次へ向かって進みたい」とあいさつ。3年間にわたったAI開発を振り返った。

 LINCの発足は2016年11月。製薬などのライフ系企業からAIに関するテーマを提出してもらい、IT系企業やアカデミアが参加して、2017年7月から10ワーキンググループ/31プロジェクトでの開発がスタートした。最終的には、ライフ系55社、IT系44社、研究機関・アカデミア12機関、その他6機関、事務局ほか5機関が参加。総勢620人以上の研究者・技術者が開発に加わった。この間に25件の学会発表が行われ、論文になった成果もいくつかあったという。基本的に手弁当での活動だったが、文部科学省、経済産業省、厚生労働省が関係する国プロジェクトと連携し、資金援助を得ながら研究を進めた。

 研究成果は、事務局を務めた理化学研究所および医薬基盤・健康・栄養研究所内のサーバーに「LINC DBポータル」としてまとめられ、10月15日からLINCメンバーに開示される。JupyterHubやKNIMEをベースに構築されており、ウェブブラウザーでアクセスし、プログラム等を実行することができる。

 さて、ポストLINCは来年4月からの仕切り直しになる。今年5月から7月にかけてあらためてテーマ募集を行い、53テーマが集まった。製薬だけでなく、農薬関係のテーマも提案されているという。今後、テーマを整理し、ワーキンググループの代表などが任命されたあと、新規プロジェクトのスタート準備を進める。現LINCからそのまま引き継がれるプロジェクトもいくつかあることが想定されているようだ。

 組織・体制としては、法人化を行い、会費も徴収する。会費は年間10万円を予定。ただし、特別に事業を援助したい企業からは年間50万円を受ける。アカデミアや政府機関からは会費を取らない。理事会が全体をコントロールし、代表は奥野教授がそのまま務める。副代表も、医薬基盤・健康・栄養研究所の水口賢司氏と、理化学研究所の本間光貴氏が予定されているようで、トップ3の体制は現LINCから引き継がれる。

 ポストLINCで目指すことについて奥野教授は、「今回のコロナで判明した教訓は、日本がデジタル先進国ではなかったこと。デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めなければならないことが明らかになった。DXは単にITツールを導入することではなく、ビジネスモデルを変えること。IT企業とライフ企業が一体化した産業モデルをつくらなければ、外国と渡り合っていくことは難しい」と指摘した。

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<関連リンク>:

LINC(トップページ)
https://linc-ai.jp/


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