東工大・関嶋准教授らが新型コロナのファーマコフォアモデル化

Mpro複製機能阻害に有効、ドラッグリポジショニングを加速

 2020.08.21−東京工業大学情報理工学院情報工学系の関嶋政和准教授と物質・情報卓越教育院の安尾信明特任講師、筑波大学医学医療系生命医科学域の吉野龍ノ介助教の研究グループは20日、スーパーコンピューターTSUBAME3.0を用いた分子動力学シミュレーションにより、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のメインプロテアーゼ(Mpro)の複製機能阻害に重要なファーマコフォアモデリングに成功したと発表した。実際に、Mproを標的とする医薬品候補α-ケトアミド阻害剤がこのファーマコフォアに適合していることを確認。今回のファーマコフォアモデルが有効とみられることから、研究グループでは今後、シミュレーションや機械学習、生化学実験を組み合わせたスマート創薬手法を駆使し、新型コロナ治療薬候補となる物質の探索を進めていく。

 今回の研究では、TSUBAME3.0を用いて1マイクロ秒の時間スケールでの分子動力学シミュレーションを実行することで、Mproと3種類の薬剤候補化合物との重要な相互作用を明らかにし、ファーマコフォアをモデリングすることに成功した。ファーマコフォアは、タンパク質の標的部位に結合(機能阻害)した医薬品の官能基群の3次元配置をモデル化したもので、今回はMproの41番目のヒスチジン、153番目のグリシン、166番目のグルタミン酸が、薬物の同じ官能基と相互作用していることを突き止めた。

 これを検証するため、Mpro阻害活性を持つことが知られているα-ケトアミド阻害剤がこのファーマコフォアに適合しているか調べたところ、1つの水酸基と2つのカルボニル基がファーマコフォアモデルと一致していることを確認した。今回の成果は、既存薬のドラッグリポジショニングを目的とした探索に有用だと期待されるという。

 論文は、「Scientific Reports」誌に、「Identification of key interractions between SARS-CoV-2 main protease and inhibitor drug candidate」のタイトルで7月27日に掲載された。





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<関連リンク>:

東京工業大学(関嶋研究室のホームページ)
http://www.cbi.c.titech.ac.jp/


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