2020年冬CCS特集:モルシス

中韓からフォーラム招待、百億の化合物群から高速検索

 2020.12.02−モルシスは、医薬・化学・材料研究向けのモデリング&シミュレーションから研究情報管理などのインフォマティクスシステムまで幅広い研究開発支援ソリューションを提供。20社近くの開発元から多彩な製品群を取り揃えている。専門ベンダーとしてのきめ細かなサポート、豊富な経験や技術力を武器に研究の最前線をサポートしている。

 主力製品は、加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)の統合計算化学プラットフォーム「MOE」。創薬研究領域で20年以上の実績があり、論文や特許での引用も年ごとに増加している。同社は日本に加えてアジアでの販売も担当しており、今年9月に初めてリモートで開催したユーザー会議「MOEフォーラム」では日本語と英語の同時通訳を入れて、海外からもユーザーを招いた。最終的に10カ国から約400人の登録者を集めたが、半数近くは中国と韓国を中心とする海外からの参加者で、トータルすると例年の4〜5倍の集客だったという。

 最新バージョンの「MOE 2020.09」が先ごろリリースされ、抗体医薬やPROTAC(タンパク質分解誘導キメラ分子)など創薬モダリティへの対応がさらに充実。スクリーニングに利用できるハイスループットドッキング、Gaussianによる量子力学/分子力学ハイブリッド計算(QM/MM)のサポート、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)対応なども機能強化が行われたほか、多言語対応により本格的に日本語をサポートすることも可能になった。とくに、抗体医薬関係ではモデリング機能が充実し、信頼性の高い物性値が算出できるようになったことで、CMC分野の研究者からも注目されている。また、今回のフォーラムのデモでは、タンパク質立体構造データベース「PSILO」との新インターフェースにも関心が集まったという。

 そのほかのライフサイエンス系では、独バイオソルヴITの創薬支援ツールに力を入れる。なかでも、ケミカルスペース高速探索ツール「infiniSee」が海外で人気が高い。最近は、数十億から百億を超える化合物ライブラリーが市販されているためで、これほどの数から購入する化合物をチョイスするためには特別なツールが必要となっている。このソフトを使えば、10の20乗個のライブラリーから類似構造検索を数分で実施することができる。国内でも今後反響が出てきそうだ。

 一方、材料科学系のモデリング&シミュレーションソフトは、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)で機械学習などに利用できることなどで需要が増えており、新バージョンで興味深い機能が追加されてきている。米イーオンテクノロジーの「ダイレクトフォースフィールド7.2」は、イオン液体向けの力場が追加された。液体は第一原理計算に適しておらず力場計算が有効だが、イオンは特殊であり良い力場がなかったという。今回の新しい力場は、電解質の研究などを対象にできる。また、熱力学物性を精度良く推算するため、温度依存性ファンデルワールス(VDW)パラメーターに対応した。シミュレーション時の温度変化に対応した力場となるため、とくに高温域での精度が大きく向上している。

 さらに、米マテリアルズデザインの第一原理計算プログラム「VASP」最新バージョン6.1では、ポストDFT(密度汎関数法)と呼ばれる高精度の計算手法が組み込まれた。光学材料などの励起状態に対応したGW法、貴金属を含む触媒などに適したACFDT-RPA法を利用することが可能。いずれも計算負荷が高いため、アルゴリズムの改善、GPUサポート機能も強化されている。


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