2020年冬CCS特集:シュレーディンガー

ニューサイエンスを適用、数十億件の仮想実験にも対応

 2020.12.02−シュレーディンガーは、モデリング&シミュレーション技術の実証の意味も兼ね、顧客との共同開発あるいは受託研究の形で自らが創薬研究を推進。臨床試験中のものや承認済みの新薬など、実際に成果を創出している。それらの研究においては、製品化前の最新ソフトウエアが使用されることも多い。そうした製品が“ニューサイエンス”として順次登場することも同社の強みといえる。

 同社は、生命科学と材料科学の両分野で合計60本近いソフトを提供しており、低分子創薬、バイオロジクス、マテリアルサイエンス、データマイニングなどのスイートで製品をラインアップしている。近年は四半期ごとにバージョンアップしており、ハイペースで機能強化が実施されてきている。

 とくに、生命科学におけるニューサイエンスの目玉として、10月末リリースの最新版で追加されたのが、「AL-Glide」と「IFD-MD」の2つ。最近のバーチャルスクリーニングは数百万から数千万のスケールにとどまらず、数億、数十億件を対象にすることがトレンドとなっている。逆にいうと、これほどのケミカルスペースを探索しないと、新しい化合物が見つかりにくくなっている。同社のドッキング計算プログラムGlideは高速さが特徴だが、さすがにこのサイズの処理は困難。そこで、機械学習を利用して数十億件のバーチャルスクリーニングを可能にするため、AL-Glideが開発された。Glideと同等の精度でスクリーニングを実行できるという。

 また、IFD-MDは、高精度なリガンド結合ポーズの予測を可能にする技術。従来の誘導適合ドッキング(IFD)でもタンパク質の結合部位が変化することを考慮していたが、IFD-MDではそれに加えてファーマコフォアや分子動力学(メタダイナミクスやWaterMapを含む)を組み合わせている。精度の高い初期構造が得られるため、解析の信頼性が大きく向上するとしている。

 一方、材料科学関係も毎回のバージョンアップで約50件の機能強化が実施されてきている。とくに、材料やプロセスを制御するエネルギーに関する重要な特性を、物理実験に匹敵する精度で予測することに力を入れており、機械学習や深層学習への適用を図っている。これにより、広大なケミカルおよびプロセスパラメーター空間を探索し、何百万もの材料や配合を迅速に評価することで、高品質で斬新なソリューションを発見。実験データやシミュレーションデータを活用して、構造と物性との相関を明らかにすることができる。

 また、創薬研究と材料研究の両方でオンラインコミュニケーション環境の「LiveDesign」が注目されている。今年になって問い合わせが急増しており、国内で最初の導入も決まったという。来年1月から専門の担当者を採用し、さらなる拡大を図る方針だ。


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