2020年冬CCS特集:ウェイブファンクション

教育用途で利用の広がり、NMR構造決定機能を改善へ

 2020.12.02−ウェイブファンクションは、分子軌道法(MO)を中心とする統合分子モデリングシステム「Spartan」、分子動力学(MD)シミュレーションに基づく化学教育ソフト「Odyssey」などのユニークな製品を提供。とくに教育機関で多用されるシステムとなっており、大学院での研究用途から始まり、その後は教育用途で大学、高校/高専、さらに中学校での導入事例も出てくるなど、裾野が大きく広がっている。大学でSpartanを使用し、中学・高校の教師になったという人もおり、世代の広がりも興味深い。

 現在販売中のバージョンはSpartan '18だが、最新版であるSpartan '20の開発が最終段階に入ってきている。早ければ年明けにリリースできる可能性もあるようだ。とくに、天然物などコンフォメーションが柔軟な分子のNMR化学シフトを計算するための一連のプロトコルが改善されている。これは、弘前大学の橋本勝教授らとの共同研究に基づいて組み込まれた機能で、複雑な計算をシングルステップで行うことができるため、NMRによる構造決定を強力に支援できる。

 また、データベースも充実し、計算および実験によるNMRスペクトルを備えた約3,500件の天然物データベースが提供されるほか、低分子化合物のIRやNMRスペクトルデータを収載し、構造活性相関などに利用できるSSPDも、化合物数が30万件以上に拡張される。さらに、異性体を作成し、各種コンフォメーション計算を行うためのグラフィカルユーザーインターフェースも新しくなり、将来的には異性体の生成につながる遷移状態の推測が行えるよう機能を拡張していく予定だという。

 並列処理効率も改善されており、16コアを超えてもパフォーマンスが低下しない。民間企業は、ますます複雑な系や大規模な系でシミュレーションを実行するようになってきており、並列処理に対する期待は高い。最近は、コア数無制限のパラレルスイートGt16版を使用して、計算環境を強化するユーザーが目立つということだ。

 そのほか、Windows 10への更新で、古いバージョンのSpartanが動作しない問題に直面するユーザーが増えているため、常に最新版が使えるメンテナンス契約を推奨することが多くなっている。


ニュースファイルのトップに戻る