富士通研究所が「デジタルアニーラ」に対応した並列探索技術
メガビット級の組み合わせ最適化問題、ビット更新の適応的切り替えなど
2020.11.10−富士通研究所は9日、組み合わせ最適化問題を高速に解く「デジタルアニーラ」を利用し、トロント大学と共同でメガビット級の大規模問題に対応できる新たな並列探索技術を開発したと発表した。イジングマシンとして、1メガビット規模の大規模求解システムを実現したのは世界初だという。実社会での実用問題にアプローチできるようになったことで、中分子の新薬開発、全国規模の輸配送計画、都市圏の交通渋滞解消、ニューノーマル時代に適したワークシフト計画など、具体的な大規模組み合わせ最適化問題へのビジネス展開を進めていく。
富士通が2018年5月から開始した「FUJITSU Digital Annealer クラウドサービス」では、現在、第2世代の8,192ビットのシステムによるサービスを提供中。実証段階から実用段階へ進むなか、さらに大規模な問題に取り組みたいというニーズが高まっている。例えば、製造分野では、多品種少量生産の現場において、部品ごとに異なる複雑な製造工程を人員・装置などのリソースや納期を考慮して工場全体でスケジューリングするなど、生産効率向上に向けた大規模な最適化が必要とされている。
問題を大規模化すると計算量が爆発的に増えるため、現在の10キロビット級システムでは、創薬は中分子、生産計画は数フロア、配送計画は県内、交通最適化は県域までが現実的な時間で解を得る限界だったが、1メガビット級になれば、創薬は中分子の高精度解、生産計画は工場全体、配送計画は全国、交通最適化は大都市圏を扱えるようになる。
今回の技術成果は、デジタルアニーラのアーキテクチャーを拡張し、大規模問題で高い求解性能を実現する並列探索技術を開発したというもの。まずは、大規模向け適応的並列探索技術で、最適な組み合わせを探るための更新ビット探索処理を、初期段階では複数ビット更新で行い、収束が進んだ段階では精度の高い単一ビット更新に切り替える。これにより、大規模な問題でも収束が早くなる。次に、複数サーバー並列での協調探索技術で、大規模問題を複数の部分問題に分割して複数サーバーに割り当て、サーバー間で部分問題の解を共有し、全体解の状況を把握しながら、各サーバーでの局所探索を適切に制御する。
今回、多品種少量のサーバー生産スケジュールを決定する問題を求解した。作業の順序、作業者の技能レベル、休憩時間、設備の利用可能時間などの複雑な制約条件を考慮する必要がある問題で、問題に当てるビット数は、作業数(100)、作業者数(13)、設備数(12)、時間スロット数(65)の積で決定される。したがって、総ビット数101万4,000ビットの条件で実証したことになる。結果として、適切な割り当てが行われ、1メガビット級の実用問題の求解に成功したことを確認した。
******
<関連リンク>:
富士通研究所(トップページ)
https://www.fujitsu.com/jp/group/labs/?_fsi=sELWFZWp
富士通(デジタルアニーラの紹介ページ)
https://www.fujitsu.com/jp/digitalannealer/