米SRIが創薬開発自動化プラットフォームを日本市場に提供
「SynFini」にAI組み込み、合成経路設計から自動合成まで一貫
2020.10.15−米SRI Internationalは13日、人工知能(AI)を組み込んだ創薬開発自動化プラットフォーム「SynFini」(シンフィニ)を日本市場で提供開始すると発表した。米国防高等研究計画局(DARPA)の助成を得て2015年から開発を進めてきたもので、昨年にはAIを応用して高度な自動化システムに発展させたという。主に低分子薬が対象で、パイプラインの加速と拡大を目的としたイノベーションを目指す製薬企業等との提携を図っていく。
SRIは1946年にカリフォルニア州に設立された非営利研究開発機関で、インターネットやコンピューターマウス、siriや遠隔手術ロボットなどの技術開発に貢献してきたという。とくに、バイオサイエンス部門は、創薬や診断薬にかかわる生物医学の基礎研究、前臨床や臨床開発などを行い、これまでに100以上の薬を臨床試験段階に進めることに成功している。
今回の「SynFini」は、機械学習ソフトウエアプラットフォーム「SynRoute」、反応スクリーニングプラットフォーム「SynJet」、マルチステップで自動化されたフローケミストリーおよび開発プラットフォーム「AutoSyn」−といったコンポーネントで構成される。
「SynRoute」は、AI/ビッグデータ、機械学習を利用して、目的とする化合物の合成ルートを数分で発見・最適化し、コストや合成可能性、実装の容易さ基づいて、実際の合成ルートをランキングして提示する機能を持っている。また、「SynJet」は、最適な反応条件をみつけるためのスクリーニングと最適化のためのハイスループットシステム。時間、温度、化学量論、pH、試薬、溶媒、基質などの重要なパラメーターを用い、実験計画法(DoE)によって、最適条件を自動的に探索することが可能。バッチ合成とフロー合成の両方に、マルチステップのルート最適化の起点を提供するように設計されているという。最後の「AutoSyn」は、マルチステップ合成を確実かつ再現性高く実行するフローケミストリーシステム。ベンチスケールの機器で、分析機能を統合。モジュール式コンポーネントにより、3,000以上の異なる多段階反応構成に対応でき、品目の切り替えも2時間以内に可能。ミリグラムからグラムスケールの合成を柔軟に行うことができる。
「SynFini」を利用することで、すでにリバビリン、タリバビリン、チアゾフリンといったヌクレオシド系抗ウイルス剤を13時間で合成することに成功しているという。これは、手作業で行う場合に比べて10分の1の作業時間に当たるようだ。
SRIでは、さらに高度なAI機能を搭載するため、グローバルな技術提携を推進中。今年3月にはフランスのIktos社と提携し、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどのウイルス感染症における新治療薬候補の特定の加速を目指している。さらに5月にはイギリスに拠点を置くExscientia社と戦略的提携を結んだ。これにより、抗がん剤をターゲットとする創薬候補の特定を加速させる。
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<関連リンク>:
SRI International(日本語トップページ)
https://www.sri.com/ja
SRI International(SynFini 紹介ページ)
https://www.sri.com/case-studies/synfini/