日本マイクロソフトがプロセス産業向けDX支援を強化

Azureを核にデータレイク活用、業種ノウハウ武器に3歩先の提案

 2021.01.30−日本マイクロソフトが、プロセス産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援に名乗りを上げた。クラウドプラットフォーム「Azure」を利用し、生産現場の制御システムやIoT機器から収集した情報、本社などのIT系の情報を統合し、データをつないで、蓄積し、加工する基盤を提供することでデジタル経営を後押ししようというもの。製造業など7業種を対象に具体的な業務シナリオを設定して、活用イメージをアピールする戦略をとっている。それぞれ業種のノウハウを持つ責任者を起用しており、BASFなどを経て昨年10月に着任したエンタープライズ事業本部製造営業統括本部の安並裕事業開発・戦略部長(プロセス製造業およびエネルギー産業担当)は「日本にとってDX推進は急務」と述べる。

 安並氏は、BASFに16年務めたあと、同じドイツのソフトウエア大手SAPに転職、その後はIT畑を歩いてきた。「SAPに転職した当時、日本の化学企業はIT活用で欧米から10年遅れているといわれていた。それから15年たったが、10年の開きはそのまま。しかも、アジアの先進的な化学企業がDXへの取り組みに積極的で、日本はアジアからも周回遅れになりつつある」と強烈な警鐘を鳴らす。

 Azureは200を超える製品とサービスで構成されており、さまざまなビッグデータを一括して格納できるデータレイクを中心にしたプラットフォーム構築が可能。データを集めるためのインターフェースが揃っており、さまざまなアプリケーションと自由に連携できる。「目的に応じて、必要なデータを、それを必要とする人に届けることができる」という。

 プロセス産業向けの活用シナリオは、(1)従業員の働き方改革(2)新しい方法で顧客とつながる(3)工場操業・設備保全の高度化(4)サプライチェーンの最適化(5)イノベーションと新たなサービス(6)脱炭素化/サステナビリティー推進/サーキュラーエコノミーの実践−に分け、プロセス産業に特有の視点で優先課題を具体的なシステム化のイメージに落とし込んでいる。

 安並氏は、「DXで重要なのはイマジニアリングの発想。まず構想を立て、それをテクノロジーとしてどう実現させるかを考えていく。日本企業はコンセプトの議論が少なく、構想を組み立てるのが苦手。そのため、プロジェクトが乱立し、テクノロジーのサイロ化に陥りやすくなって、データが分断されてしまう」と指摘する。また、「現場に気を遣いすぎるのも良くない場合があり、トップダウンで若い人に権限と予算を与えた方が良い結果になることが多い」とも。

 実際、インダストリー4.0へ向けてのステップを考えると、日本企業の多くは最初の「データ収集」の段階で、データをつなぎ合わせることに悩んでいるという。それに対し、世界の先進企業はデータを解析して因果関係や相関関係を究明し、将来に何が起きるのかを「予測」、さらにその先の予測した結果に基づいて最適な施策を自動的に講じる「対処」のステージにまで進んでいる。例えば、化学プラントの自律自動運転、デジタルツインを使用した予知保全、社内外の知識を整理し活用するR&D支援など、すでに実用段階に入っているものが多く、アジアの先進企業もそれらをキャッチアップしつつあるという。

 DXの構想づくりの点で、マイクロソフトは世界中の先端テクノロジー企業とパートナーシップを組み、実証実験と実用化を進めており、その結果として広く深い業種・業務知識を獲得してきている。そのため、Azureをベースにしたリファレンスは最適な足がかりになるという。また、「メールやオフィスソフト、チームズなど、日常使っている環境の延長線上で人工知能(AI)にも取り組むことができるのが利点。日本の実情に合わせたビジョンを示し、3歩先を行くような提案をしたい」と強調する。今後、国内ではエンジニアリング会社との協業を深めたいとしている。








******

<関連リンク>:

日本マイクロソフト(マイクロソフト・クラウド・ブログ)
https://cloudblogs.microsoft.com/industry-blog/ja-jp/

日本マイクロソフト(安並氏のブログ)
https://cloudblogs.microsoft.com/industry-blog/ja-jp/manufacturing/2020/12/07/realizing-dx-of-process-manufacturing/


ニュースファイルのトップに戻る