2021年夏CCS特集:ドットマティクス

グループ内で連携を推進、AI活用基盤として機能強化

 2021.06.29−ドットマティクスは、米インサイトフルサイエンスとの統合が完了し、新体制に移行している。引き続きドットマティクスブランドでの活動が行われるため、ユーザーへの対応には変化はない。逆に、グループ内の他の製品群との連携や、投資会社のインサイトフルパートナーズが出資する多数の企業とのコンビネーションが推進されることで、さまざまなソリューション展開が期待できそうだ。

 ドットマティクスは、クラウド対応により、研究のための生物・化合物情報を統合的に取り扱うためのプラットフォームを提供。データの登録・検索、解析・可視化、電子実験ノート、ワークフローなど基盤となる機能を実装している。一方、インサイトフルサイエンス製品はアプリケーションレイヤーが中心で、データ解析・可視化のための「GraphPad Prism」、臨床試験のデザインプラットフォーム「nQuery」、バイオインフォマティクス統合ツール「Geneious Prime」、クローニング研究を支援する「SnapGene」などの製品群を持つ。

 今回、今年3月にインサイトフルサイエンスがドットマティクスを買収する計画を発表したあと、4月末ににすべての手続きが完了した。社員数は合わせて約440人、売り上げ規模は1億ドルを超える企業となった。今後は、ドットマティクスのプラットフォーム上にさまざまなアプリケーションを統合していくかたちで開発が進められるとみられる。当面の目標として株式公開(IPO)が考えられており、さらなる買収・合併が行われる可能性は高い。

 さて、ドットマティクスの国内での事業展開も順調で、日本法人のスタッフも増員中。最近では、中堅やベンチャー企業の引き合いも多いが、アマゾンウェブサービス(AWS)にプライベート環境を用意して、費用をかけずにすぐに実証・検証を行うことができるため商談は活発だという。日本法人でセミナーや製品紹介の動画に字幕を付けるなど、国内の顧客にわかりやすくする工夫をしており、昨夜に行われたオンラインイベント「化学・材料科学業界における研究開発のデジタル化戦略について」も、オンデマンドでみられるようにするため問い合わせてほしいとのことだ。アルケマの導入事例の発表もあり、興味深い。また、人工知能(AI)の応用が進展していることから、7月6日には「AIを活用した創薬研究へのトランスフォーメーション」がオンラインで開催される。ドットマティクスのプラットフォーム上で利用できるAI/機械学習のプロトタイプと、プラットフォームに保存されているすべてのデータを自動的に機械学習できるようにする計画などについて説明が行われる。

 一方、製品の新しい機能では、メディシナルケミス向けの構造活性相関解析ツール「Blueprint」、特許申請などに役立つ超高速反応式検索ツール「Reaction Explorer」が注目されている。前者は、Rグループ解析やMMP(マッチドモレキュラーペア)など、やりたい解析を選ぶと、ステップバイステップで手順がガイドされるため、操作が非常にわかりやすい。後者は、ロシュと共同開発した機能で、電子ノートに記載されている合成実験の中から最も効率的な反応を組み立てて特許申請する作業を効率化できる。1,000万以上の化合物の反応式を瞬時に検索するほか、収率・純度・触媒作用・反応経路・反応条件なども簡単にマイニングできる。


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