2021年夏CCS特集:Elix
MI/AI創薬に専門化、透明性重視で顧客にノウハウ
2021.06.29−Elix(エリックス)は、人工知能(AI)テクノロジー企業として、AI創薬およびマテリアルズ・インフォマティクス(MI)に注目。この分野に特化して、コンサルティングからモデル開発・改良、モデルのライセンス提供までを一気通貫でサポートしている。グローバルに行われた調査で、MI支援サービス企業として世界のトップ20に数えられるなど、高い技術力を特徴としている。
同社は2016年の設立。当初はディープラーニング/機械学習をコアに幅広いアプリケーションを探ったが、ライフインテリンジェンスコンソーシアム(LINC)に参画して「分子設計AI」(PJ16)などのプロジェクトで活動した経験を踏まえ、AI創薬とMIに特化する方向性を見いだしたという。
現在は、特定の顧客と共同研究を行うスタイルのビジネスを推進しており、これまでに約40社とのプロジェクトを実施した実績がある。とくに、実際的なAI開発を目指す場合、データを集めたりツールを導入したりする前に、的確な課題設定が行えるかどうかがプロジェクトの成否を分ける。同社は、こうした段階から実現可能性を総合的に検討し、顧客側にAI/機械学習に詳しいエンジニアが少ない場合でもきめ細かなサポートでプロジェクトを遂行する。その際には透明性を重視し、顧客側にもノウハウが蓄積されるように気づかっているという。
同社の技術陣は国際色が豊かで、世界中から優秀な人材を集めている。エンジニアの大半は外国人で、社内の公用語も英語。日本で働きたいという海外のAI技術者の受け皿として強力な布陣を築いていることは興味深い。
基本は、薬や材料の物性や特性をAIで予測するモデル、また候補化合物をAIが提案する生成モデルになるが、ディープラーニングの最新手法を提供するほか、VAE(変分オートエンコーダー)やGAN(敵対的生成ネットワーク)を使った生成モデルなど、新しい手法にも取り組んでいる。AI技術の進歩は非常に早いため、共同研究のテーマには限りがなく、継続やリピートでの案件も多いという。
今後は、AI創薬で成功報酬型の共同研究を行い、ライセンスアウト可能な候補化合物の創出を目指していく考え。合成可能性や特許性も考慮して新規物質をAIで提案できるようにし、場合によっては自社での創薬パイプラインを持つことも検討したいとしている。また、MIについてはツールやサービスの製品化を目指した開発を進めており、10月に予定されているAI・人工知能EXPOに合わせてローンチしたいということだ。そのほか、最近では海外のイベントにも参加しており、ビジネスを世界に広げる足がかりを築く準備も進めている。