2021年夏CCS特集:富士通

新時代のデジタルラボへ、多彩なソリューションマップ

 2021.06.29−富士通は、デジタルラボ事業部を通して、創薬・化学産業におけるR&Dプロセス全体を変革させる「デジタルラボラトリープラットフォーム」(DLP)を提供。「デザイン」(設計)、「ビルド」(合成)、「テスト」(分析・評価)、「ラーン」(解析・学習)のサイクルを意識し、インフォマティクスやシミュレーションに加え、ロボット、人工知能(AI)、仮想現実(VR)などのテクノロジーを駆使して、新しい時代のデータ駆動型デジタルラボを実現させようとしている。

 DLPは、「何度も実験しない」「デジタルでプロセスをつなげる」「新しいインターフェースでアイデアの創出を促す」などの考え方が基盤にあり、R&Dサイクルをもれなく支援するためのソリューションマップを整備してきている。具体的な製品は自社開発からパートナー製品まで多様だが、同社が代理店として力を入れているのが加ACD/Labs製品。すでに20年近い取り扱い実績があるが、最近は単機能のパッケージからニーズを幅広く満たすトータルソリューション型の製品提供へと転換してきているという。なかでも、新しい製品として、ハイスループット実験を支援する「ACD/Katalyst D2D」は登録した材料(試薬、触媒、配位子、溶媒など)を反応スキームにドラッグ&ドロップするだけでハイスループット実験をデザインし、計画作成、実施、機器分析、評価・意思決定をトータルサポートしてくれる。また、製品中の不純物管理を法規制に対応して行える「ACD/Luminata」も注目度が高い。

 さらに、ハンガリーのケムアクソンが開発した「DesignHub」は、DLP上で行う研究のワークフローにおいて、コラボレーションプラットフォームを実現するシステム。バーチャル会議室で仮説立案や化合物設計、物性計算などを行いながらディスカッションすることが可能。アシスタント機能により、関連するデータの準備や重要なアイデアの保存、議事録の作成などにかかる時間を短縮できるという。

 一方、自社開発製品では、今年に薬物動態・毒性予測の「SCIQUICK」を発売している。国プロ成果を商品化したもので、3つの研究機関と7つの製薬企業がデータ提供に協力しており、溶解度、P糖タンパク質輸送能、脳ホモジネート結合、血漿タンパク結合、肝固有クリアランスなどが予測できることで関心が高い。さらに、富士通独自の深層学習“ディープテンソル”を用いたモデル構築・物性予測を行う「SCIQUICK-DT」をSaaS(サービスとしてのソフトウエア)形式で提供する予定で準備している。化学構造の原子のつながりの特徴を学習しているため、説明可能な予測結果が得られるとして注目される。

 また、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)に役立つツールとして開発中なのが「SCIDOCSS」(仮称)。長年研究している自然言語処理と化学ナレッジグラフの技術を応用したもので、特許や技術文書から化合物に関連した情報をもれなく取り出すことが可能。化合物名の名寄せも行っており、構造式での検索も可能。化合物情報の類似度に基づいて結果をランキングする機能もあり、MIに関連したデータの調査で利用されることを想定して、今年の第2四半期に製品化を予定している。

 また、混合物の物性・特性が最適となる材料種とその比率を一気通貫に算出する「混合物設計ナビ」を開発中。データの一部が不足しているような場合でも、混合ガウスモデル(GMM)などを利用して補完する機能もあり、遺伝的アルゴリズムやデジタルアニーラで最適化を行う。

 ここで紹介したのはごく一部であり、同社ではDLP実現に向け、順次製品体系の充実を図っていく方針だ。


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