2021年夏CCS特集:QuesTek Japan

日本と欧州で合弁を設立、積層造形用の合金開発で実績

 2021.06.29−QuesTek Japanは、計算材料設計サービスを提供する専門企業として昨年2月に設立された。米マテリアルゲノムイニシアティブ(MGI)における成果の1つとして、金属材料の開発に成功したことで注目された存在だ。独自のICME(インテグレーテッド・コンピューテーショナル・マテリアル・エンジニアリング)に基づく研究手法を活用し、とりわけ3Dプリンティングの積層造形で豊富な実績を持っている。複雑な材料設計領域で最適な解決を導き出すことができる。

 米QuesTekは1997年設立。マサチューセッツ工科大学のグレゴリー・オルソン教授が共同創設者であり、米国内で12の特許を取得、350以上のプロジェクトを実施してきている。2016年にはサーモカルク社と共同で欧州法人(スウェーデン)、2020年に伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と共同で折半出資による日本法人を設立した。

 CTCは、シミュレーションで50年の経験があり、サーモカルク社の製品を販売・サポートしていたことなどからQuesTekとの関係が生まれ、2019年から国内での共同プロモーションを開始。合弁設立を機に本格的なビジネスに移行している。

 マテリアルズ・バイ・デザインと呼ばれる同社のICMEアプローチは、材料プロセス、材料組織、材料特性、材料性能の間の相関関係を見いだし、データベースやシミュレーションをもとに要求性能を満たす材料設計やプロセス最適化を行うもの。人工知能(AI)や機械学習を駆使して行うデータ駆動型材料開発のパートナーとして、ユーザー企業の研究開発を支援する。

 米海軍機の着艦フックに採用された独自合金「Ferrium M54」鋼などの成功事例があり、この材料のライセンシングも行われている。鉄鋼だけでなく、アルミニウム、コバルト、銅などの合金、ハイエントロピー合金(HEA)の実績があり、積層造形用の新規合金設計などでも50件以上の事例がある。積層造形は、今後日本でも需要が増えると考えられることから、同社の活躍の場も広がると期待されるだろう。将来的には、ICMEで開発された日本発の新素材を世界にライセンスすることが目標だという。


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