2021年夏CCS特集:QunaSys

量子コンの実応用を探索、コミュニティー通し知識取得

 2021.06.29−QunaSys(キュナシス)は、量子コンピューターの潜在能力を最大限に引き出す技術やソフトウエアを開発する研究開発ベンチャーで、早期に実用化が図られるアプリケーションとして“化学”に注目。量子アルゴリズムの有効性を実際に検証できるクラウドサービスの提供や、量子コンピューターの実応用の可能性を探る研究コミュニティの形成など、さまざまな取り組みを進めている。

 同社は、この分野で著名な大阪大学大学院基礎工学研究科の藤井啓祐教授が共同創設者として2018年2月に設立された。化学計算にフォーカスし、パートナーとなる化学系企業との共同研究により数多くのプロジェクトを実施してきている。

 その最新成果が、5月に行われたマイクロソフトの開発者会議「Microsoft Build」で発表されている。これは、QunaSysとENEOSによる共同研究で、マイクロソフトの「Azure Quantm」を利用し、ハネウェルのイオントラップ型マシン上で振動スペクトル解析を行ったというもの。水とメタノールの分子振動モードをシミュレーションし、量子シミュレーション結果と既知の値が一致することを確かめた。

 とくに、量子コンピューターは既存の計算機とはまったく違うアルゴリズムで動くため、基礎的な知識の理解が必要になる。そこで同社では、材料開発の最前線で活躍する企業研究者を対象に、勉強会やユースケースを探索するためのコミュニティ「QPARC」を組織した。昨年6月から第1期の活動を行い、光化学反応、周期系無機材料、反応経路探索、分子動力学法などのテーマで成果をあげているという。今年4月からは第2期がスタートしており、メンバーはさらに増えて40社を超えている。製薬系の企業も入ったという。第3期の募集は来年初頭から開始する予定だ。会費は1人当たり年間10万円。

 QPARCで実際にユースケースを探索する際に使用しているのが、クラウドサービスとして提供している「Camuy」。既存の量子化学計算プログラムに似せたインターフェースを備えており、計算化学者が理解しやすいハイレベルのインプットを、量子回路に落とし込み、量子シミュレーターや量子デバイス上で実行させることができる。Camuyには、実際に分子の各種プロパティを求める機能があり、その結果を用いて反応経路探索をしたり、分子動力学シミュレーションをしたり、励起状態のダイナミクスを調べたりすることが可能。Camuyはいろいろな量子アルゴリズムをサポートしており、その有効性や優位性を検証する目的で利用されている。将来的には、現在のスーパーコンピューターで行っているような解析が、量子コンピューター上で簡単に行えるようにしたいという。


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