2021年夏CCS特集:シュレーディンガー

研究目的に沿い計算実施、MI/機械学習の基盤に推奨

 2021.06.29−シュレーディンガーは、創薬研究から材料研究までの革新的な支援ソリューションを提供。コア技術である原子・分子レベルのモデリング&シミュレーションに加え、人工知能(AI)や機械学習を活用するとともに、社内外の研究グループがコラボレーションするためのプラットフォームの実現でも実績を拡大している。同社は昨年8月にNASDAQに上場したが、昨年12月期の業績も好調であり、総収入は前年比26%増の1億810万ドル、ソフトウエア事業は同39%増の9,250万ドルを計上している。

 国内の事業も順調に拡大しており、とくに材料研究向けのマテリアルズサイエンススイート(MSS)が大きく伸びた。有機EL(OLED)、ポリマー、複合材料、原子層堆積(ALD)/化学蒸着(CVD)などの半導体プロセス、触媒/特殊化学品、製剤、アロイ/セラミックスなど幅広い用途に対応。とくに、実際の研究目的を主体にして、さまざまな解析手法を組み合わせたワークフローのかたちで提供できることが大きな特徴となっている。

 計算エンジンも多彩なプログラムが揃っており、量子力学関係ではオプトエレクトロニクス、結合/リガンド解離エネルギー、反応解析、有機材料の電気伝導度、アモルファス構造中の分子特性、スペクトル特性などを解析するワークフローが確立されている。また、大規模な分子動力学計算を実行することにより、平衡化、拡散係数の算出、ガラス転移温度と線膨張係数の計算、固液界面の相互作用エネルギー、応力−ひずみ曲線、ポリマー構造体への水の吸収などを解析することができる。材料研究者にも直感的に理解しやすいGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)で利用できることも利点だ。

 一方、創薬研究向けのコラボレーションプラットフォームとして開発された「LiveDesign」が、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)分野でも注目されている。機械学習のためのデータを記録・蓄積し、足りないデータを補完し、機械学習を自動で行い、解析手法と結果を共有するという目的で、ぴったりの機能を提供できるためである。

 MIのために電子ノートを導入する事例もあるが、材料分野は非構造化データが多いため、データを紐付けることが難しい場合がほとんど。このため、同社ではLiveDesignをMIの基盤にすることを推奨している。共通のスプレッドシートに同じ項目で整理してデータを紐付けて入力でき、欠落したデータ項目には物理化学計算や機械学習モデルで予測値を代入、揃ったデータセットを自動的に機械学習にかけ、構築したモデルや解析結果を共有することが可能。一連の作業を統合的に実施することができる。シミュレーションや機械学習などで計算資源が必要な場合はクラウドサービスも用意している。


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