2021年夏CCS特集:TSテクノロジー

国プロ参加で実績を拡大、第一原理分子動力学など強化

 2021.06.29−TSテクノロジーは、計算化学の専門知識をベースにした事業を展開する山口大学発ベンチャー。設立から10年を超え、順調に発展を遂げている。昨年は、国からの助成金を活用したプロジェクトで実績を伸ばしたほか、コロナ禍でもホームページを通した問い合わせが増えたことから、ウェブサイトの見直しや充実を図ることにしている。

 同社は、昨年度から新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の新産業創出新技術先導研究プログラム「デジタル駆動化学による機能性化学品製造プロセスの新基盤構築」を推進。機能性化合物・材料の分子設計から合成経路の提案、仮想実験、実証試験、装置設計、工業生産までを一気通貫できる基盤技術の確立を目指し、東京大学、山口大学、大阪府立大学、産業技術総合研究所のグループと共同で研究を進めている。

 これは先導研究であるため今年度で終了となるが、本研究プロジェクトへの移行を目指し、さらなる成果を目指したい考えだ。とくに、この中では、同社の母体となった山口大学・堀研究室で開発された遷移状態データベース「TSDB」を使用し、合成経路設計や合成経路評価を効率化することに取り組んでいる。これを商用サービスとして提供する計画も進んでいる。

 また昨年度は、日本医療研究開発機構(AMED)の医療分野研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)で推進されている「低磁場核偏極による生体分子の超高感度センシング技術の開発」(研究代表=北海道大学・松元慎吾准教授)にも参加した。これは、水素添加で作製した超偏極フマル酸を肝障害マウスに投与し、そのMRI撮像により、肝障害における壊死のイメージングに成功したという研究で、計算化学による理論解析を行うステージで同社が加わったもの。通常の計算化学では再現が難しい現象であり、とくに水素のスピン偏極をどう取り扱うかで苦労したという。詳細な論文は今年3月に発表されており、ChemPhysChem誌の表紙を飾ったということだ。

 一方、メインである受託研究・受託計算事業も着々と実績を重ねているが、最近では第一原理分子動力学法で対応しなければならないようなテーマが増えてきているという。物質の界面で、物理吸着だけではなく化学吸着もともなうような現象で、VASPやQuantum ESPRESSOなどのプログラムを本格的に活用する準備を進めていくことにしている。

 そのほか、ウェブサイトの活用では、科学技術計算専用に同社が組み上げた並列コンピューター「NGXシリーズ」について、見積もりが簡単にできる機能を追加するなどして販売を促進する計画である。


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