富士通が“Deep Tensor”を利用した化合物特性予測
予測に寄与する部分構造を明示、LINC研究成果を商用化
2021.09.03−富士通は2日、説明可能な独自のディープラーニング技術である“Deep Tensor”を利用し、構造式から化合物の特性を予測する「FUJITSU Digital Laboratory Platform SCIQUICK-DT」を提供開始したと発表した。薬物動態に関係した代謝安定性や経口吸収性をクラウドで予測するサービスと、ユーザー個別のニーズに合わせてDeep Tensorで予測モデルを構築する受託サービスの2種類からなっている。予測サービスの利用料金は月額67万円。2024年度末までに6億2,000万円の売り上げを見込んでいる。
同社は今年2月に薬物動態のADME(吸収・分布・代謝・排泄)および毒性を予測する「SCIQUICK」を製品化している。これは、旧製品のADMEWORKSの後継製品として、日本医療研究開発機構(AMED)プロジェクトをベースに開発したものだが、今回の「SCIQUICK-DT」は別製品。ライフインテリジェンスコンソーシアム(LINC)の第1期活動における研究成果を商用化したものとなっている。
Deep Tensorは、化学構造式をSMILESのようなテキストに変換せず、頂点と辺(原子と結合)の集合からなるグラフ構造データとして取り込み、化合物の特徴量(構造上の特徴と特定の特性値との関係)を自動生成する。このため、特性に影響している構造がどの部分かを学習結果から判別することが可能。化学者が理解しやすく結果の考察が容易なことが特徴だという。
現在、予測サービスとしては、予測したい化合物をSDFファイルで入力することにより、代謝安定性が高いか低いか、経口吸収性が高いか低いかを2分類で示すことができる。予測モデルの数は順次増やしていく計画である。また、モデル構築サービスは、製薬会社が希望する評価項目に合わせて収集した化合物のデータを学習させることにより、独自の学習モデルを構築するもの。とくに、既存の機械学習や統計処理で精度が上がらない場合などに、Deep Tensorを試してほしいとしている。
これまでのところ、低分子医薬を対象にしてきているが、アミノ酸がつながったグラフ構造と考えれば、生体高分子を扱うことも可能だと考えられ、ペプチドや核酸を利用した医薬分野への適用も探りたい考え。同様に、ポリマーなどの高分子、結晶構造をグラフに見立てれば無機材料系に適用できる可能性もある。事業を進めながら、ユーザーとの間で検証を行っていく計画だ。
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<関連リンク>:
富士通(Digital Laboratory Platform のサイト)
https://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/tc/sol/dlp/
富士通(SCIQUICK-DT 製品紹介ページ)
https://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/tc/sol/sciquick-dt/