2022年夏CCS特集:三井情報

ベイズ最適化を簡単実行、試作版アプリとして無償公開

 2022.06.28−三井情報(MKI)は、東京工業大学物質理工学院の一杉太郎教授らとの共同研究を行い、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を実施するためのアプリケーションを開発、試作版として無償で公開し、材料研究者からのフィードバックを募っている。ベイズ最適化を使って次に行うべき実験条件を提示する機能があり、機械学習の知識がなくても簡単に利用できる。現状では、社内における研究の一環という位置づけだが、今後実証実験などにも取り組み、腰を据えて事業化の可能性を探っていく考えだ。

 同社は、ICTを基軸とした事業戦略パートナーとして顧客のIT戦略を共創し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援することをミッションとしている。とくに、長年培った“ナレッジ”を生かすことが強みだが、バイオインフォマティクスやケムインフォマティクスの取り組みを通じて蓄積した計算科学の知見が豊富。新しい事業領域として、MIに注目したという。

 現在、開発された試作版アプリケーションは、三井情報が用意するウェブサイト(https://mki-bayesopt.mkilabs.io/)上で利用可能。簡単なアンケートに答えるだけで実際に試すことができる。「誰でも使えること」と「実際に材料研究の生産性向上に役立つこと」を目標に開発されており、利用方法は簡単。画面上で、説明変数に対して取り得る範囲を設定し、手持ちの実験データを数件入力、実行ボタンをクリックすると次に実験をするべき説明変数の値が提示される。説明変数の数は1つか2つかを指定できる。提案に従って実際に実験したあと、その結果を目的変数としてあらためて入力し、学習用のデータに加えることを繰り返し行うことにより、最適解に近づけていく。この一連のプロセスがベイズ最適化であり、データサイエンスの知識がなくても、予測平均や標準偏差、獲得関数などの変化を画面上で確認しながら実行していける。

 ベイズ最適化は、データ解析として汎用的な技術であり、さまざまな実験に当てはまるほか、計算量も小さくて実装も容易だという利点がある。試行錯誤的に最適解を求めるために、100回や1,000回の実験が必要な場合に、20回程度の実験で完了できるという期待があるということだ。今年3月に公開して以降、民間企業や大学・研究機関からすでに100件ほどのアクセスがあり、実際にデータを入力して使用するケースも多い。

 今後は、利用者のフィードバックを得て、材料研究者がわかりやすい可視化の方法を探っていくほか、ベイズ最適化以外の分析方法にも対応させたいという。また、実験装置との連携も図り、データの測定・収集・解析を自動化した自律的システムをプラットフォームサービスとして提供することを狙いたいとしている。一杉教授は、現在の所属は東京大学大学院理学系研究科化学専攻に異動しているが、引き続き連携を図りたい考えだ。


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