2022年夏CCS特集:パトコア
創薬研究のハブ機能強化、PROTAC対応SAR実現
2022.06.28−CAB'S(カブクス)グループのパトコアは、ハンガリーのケムアクソン製品による創薬支援ソリューションの販売に加え、試薬管理や化学物質管理に役立つシステムの提供で実績を伸ばしている。昨年は、研究所に特化したクラウドベースの間接購買システム「Smart Purchase」が好調だった。試薬やラジオアイソトープ(RI)化合物、実験動物、消耗品などを法規制に準拠した承認ワークフローで調達・購入できるようにするシステムで、情報セキュリティマネジメントの「ISMS認証」を得たサービスとなっている。
さて、今年の戦略商品として引き続き力を入れるのが、ケムアクソンの創薬プロジェクト管理コラボレーションプラットフォーム「DesignHub」。仮説を立てて一連の化合物をデザインし、物性計算やデータベース検索、人工知能(AI)予測などを通して化合物の活性や新規性を評価、優先順位を定めてプロジェクトを進行させ、その進捗を管理することができる。CRO(医薬品開発受託機関)や大学など外部のパートナーと連携しながら柔軟にプロジェクトを遂行できるシステムとなっている。
とくに今回、米サターラが開発したデータサイエンス基盤製品「D360」と統合した使い方が可能になった。DesignHubに蓄積したデータをD360で解析・視覚化することができる。低分子薬だけでなく、さまざまな創薬モダリティに対応できる柔軟性を持ち、いろいろなソースから取り込んだデータを分析することで、研究継続/中止などの意思決定を迅速に下すことも可能になる。ケムアクソンでは、中国のChemical.ai社のAI利用合成ルート予測システムなど、DesignHubと組み合わせるツールを増やしてきており、まさに創薬研究のハブとして機能が充実していくことが期待されよう。
次に注目されるのが、米アルトリスの構造活性相関解析ツール「SARvision」に追加された新製品PROTACモジュールである。これは、創薬モダリティで関心を集めているPROTAC(タンパク質分解誘導キメラ分子)に対応した機能。PROTAC特有の3要素(2つのリガンドとリンカー分子)を自動的に分解し、構造活性相関解析を行うことができる。手作業では困難だった作業も容易で、例えばE3リガーゼのリガンドを左側、標的タンパク質に結合するリガンドが右側になるように分子の向きが見やすく調整され、Rグループテーブルで分解されて3要素がそれぞれ配置される。フィルタリング、ソート、ヒートマップ表示が可能で、解析ボタンの実行により活性に影響を与える構造変化を容易に特定することができる。
一方、同社は国内だけでなく海外向け事業も順調で、独自開発した法規制物質判定システム「CRAISチェッカー」が、ケムアクソンによって「コンプライアンスチェッカー」の商品名でグローバルに販売されている。海外の法規制情報をタイミング良く更新することで普及が進んできているという。機能強化も随時進めていく方針だ。