CCS特集2022年冬:TSテクノロジー

反応速度論の解析で実績、NEDOプロ実施し検証へ

 2022.12.01−TSテクノロジーは、山口大学発の先端的な化学技術と情報技術を基盤に、高度な計算化学/分子シミュレーションを駆使してパッケージソフト開発から受託研究サービスまで幅広い事業展開を行っている。

 同社は山口県宇部市を本拠としつつ、2019年には東京にオフィスを構えて2本社体制を確立。一定期間の専従体制で研究協力する「FTE契約」では、関東・首都圏の顧客への対応が図りやすくなっている。また、宇部には計算化学およびマテリアルズ・インフォマティクス(MI)に関する研究開発拠点として「機能材料研究開発センター」を設置しており、助成金制度を活用した研究活動も活発に進めていることが特徴だ。

 現在、推進中なのが新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「機能性化学品の連続精密生産プロセス技術の開発」(プロジェクトリーダーは中部大学の山本尚教授)。目的化学品の最適製造経路設計および、化学品製造の環境負荷低減(省エネ・省廃棄物)と高速・高効率なオンデマンド生産を可能とする革新的製造プロセス(フロー合成技術等)の開発を狙ったもので、プロジェクト全体は「高効率反応技術の開発」「連続分離精製技術の開発」「合成プロセス設計技術の開発」の3つの研究開発項目から成り立っている。

 TSテクノロジーは、3番目の「合成プロセス設計技術の開発」の実施機関として加わっているが、ここに同社が独自開発している「Kinerator」(反応速度論シミュレーター)が活用されている。量子化学計算に基づいて反応速度定数を計算し、基質の濃度比変化を時間積分することで、反応の減衰および基質の最終濃度比をシミュレーションすることができる。多段階反応や競合反応が絡み合う反応系でも、逆反応を含めた各反応の速度差を精密に考慮することが可能。これにより、反応物の半減期、反応平衡化までの反応時間、生成物の最終生成比や選択率、反応時間や生成比の温度依存性などを明らかにすることができるという。NEDOプロジェクトの中では実際の反応器を使って計算結果を検証することも行っており、研究のさらなる進展が期待される。先月、九州大学で開催された「第45回ケモインフォマティクス討論会」でも、このキネティクスシミュレーションに関して口頭発表を行った。今後、計算値のさらなる精緻化を図り、より幅広い反応時間における実測値の取得が必要なことがわかったとしている。

 一方、事業の大きな部分を占める受託研究サービスだが、企業からのニーズは引き続きおう盛で、社内のリソース(人的、設備的)いっぱいでの運営となっている。分子シミュレーションでの反応解析などがメインの案件だが、データ解析などMI領域でサポートしてほしいという要望も増えているようだ。


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