Quantinuumが量子コンピューター用計算化学プラットフォーム強化
最新の量子アルゴリズムに対応、ユーザー体験の改善も
2022.12.29−量子コンピューティングを推進するQuantinuum(クオンティニュアム)は、量子計算化学ソフトウエアプラットフォームを機能強化し、「InQuanto 2.0」を提供開始した。現行の量子コンピューターでさまざまな量子アルゴリズムをトライアルすることができ、新しいアルゴリズムをサポートしたほか、計算の効率性やユーザーエクスペリエンスも向上している。
同社は、Honeywell Quantum Solutions(量子ハード事業)とCambridge Quantum(量子ソフト事業)の経営統合により、2021年に設立された企業。世界に450人以上の社員がおり、量子コンピューティングの研究および社会実装を推進している。現在、アプリケーションとしては、サイバーセキュリティと計算化学に力を入れている。
「InQuanto」はさまざまな量子コンピューティングツールをひとつのアプリケーションとしたまとめたプラットフォームで、エネルギー、自動車、医薬品、素材などの分野で世界をリードするパートナー企業との共同研究の集大成として、企業の計算化学者を対象に開発された。最新の量子アルゴリズム、高度なサブルーチン、化学に特化したノイズ軽減技術に基づいて構築されている。
今回の最新バージョンでは、プロトコルクラスにおけるワークフローの改善により、一部の状態ベクトル計算で最大10倍のスピードアップを実現したほか、対称性を利用した積分演算子クラスにより化学ハミルトニアンの二電子積分を効率化し、メモリー使用容量を50%削減した。また、アルゴリズムについては、多参照計算をサポートし、新しいタイプの変分量子アルゴリズムを可能にするカスタムansatze(アンザッツ=問題の特性に応じて最適解を効率的に探索するために用いられる角度パラメーター付きの量子回路)を搭載。変分量子ソルバーの一般化により虚数および実時間進化シミュレーションを可能にしたほか、フラグメント分子軌道法(FMO)のサポート、4粒子縮退密度行列を測定しVQE(Variational Quantum Eigensolver)エネルギーを補正するQRDM-NEVPT2法のサポートを行った。そのほか、可視化や他の化学パッケージとの相互運用性の改善、同社が開発・運用している量子コンピューター「H-Series」におけるリソースコスト推定の改善なども図られている。
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