富士通とAtmoniaがアンモニア合成触媒探索を効率化

AI応用で量子化学計算を高速化、因果関係から絞り込み指針も

 2023.02.22−富士通とアイスランドのベンチャー企業 Atmonia(アトモニア)社は21日、アンモニアをクリーン合成するための触媒探索の共同研究において、量子化学シミュレーション高速化技術を開発、これと富士通の人工知能(AI)技術を組み合わせることで、触媒剤両候補を探索する期間を従来の半分以下に削減することに成功したと発表した。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)計算結果をもとに、AIによる機械学習で触媒候補を絞り込むシミュレーションモデルを確立したもの。常温常圧で水と空気と電気からアンモニアを効率良く合成するための触媒発見につながると期待される。

 両社は、2022年4月からアンモニア合成触媒の探索を効率化する技術の共同研究を推進しているが、触媒材料にはさまざまな原子配置の構造、化学元素の種類やその比率など膨大な組成の組み合わせがあり、通常の量子化学計算では十分な探索が行えないことが課題となっていた。

 そこで、富士通のHPCシステムを利用し、アトモニア社が持つアンモニア合成シミュレーションデータをもとにさまざまな量子化学計算を実施。計算結果から得られた原子配置の構造、化学元素の種類や比率など、入力と出力の関係を教師データとして、対象の材料探索に特化した機械学習を効率良く行わせた。このAIモデルを利用することにより、100倍以上の速さで従来の量子化学計算と同等精度の予測結果を求めることが可能になったという。

 また、このAIモデルを利用して1万ケース以上のアンモニア合成触媒候補物質の計算データを生成し、富士通独自のAIである因果発見技術を適用。触媒原子の種類や位置関係、および反応エネルギー量などの項目間の因果関係から、触媒候補の合金のベースとなる金属は族番号が小さいものが適しているなど、触媒に適した材料の傾向を発見することができた。それをもとに、材料候補の絞り込みの方向性を決定することに役立てたとしている。

 今回のプロジェクトのほかに、富士通は量子インスパイアード技術「Fujitsu Computing as a Service Digital Annealer」を活用し、触媒に適した元素配置の最適な組み合わせを発見する技術を、トロント大学と共同で研究している。さらに、サステナブルな世界の実現を目指す「Fujitsu Uvance」のもと、コネクテッドな社会を実現するデジタルインフラ「Hybrid IT」領域の高度なハード・ソフト技術を容易に利用できる「Fujitsu Computing as a Service」(CaaS)に、今回の量子化学シミュレーション高速化技術を搭載することも予定していく。

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<関連リンク>:

富士通(Fujitsu Uvanceのページ)
https://www2.fujitsu.com/jp/uvance/

富士通(Fujitsu Computing as a Serviceのページ)
https://www.fujitsu.com/jp/services/caas/


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