CCS特集2023年夏:シュレーディンガー

デジタル化学創薬で実績、受託・自社研究での成果続々

 2023.06.28−シュレーディンガーは、伝統的なCCSベンダーの中で、実際の創薬を次々に成功させている唯一と言っていい企業であり、自社のソフトウエア技術の優位性・実用性を実証しつつ、独自の“デジタルケミストリー創薬”で着々と実績を重ねている。

 同社はソフトウエア事業と創薬事業が両輪で、ソフトでは生命科学と材料科学の両分野をカバー、創薬は受託研究を柱とするコラボレーション事業と自社創薬事業の2つに分かれている。ソフトのユーザー企業は世界に1,750社、コラボレーションは生命と材料を合わせて14件のプロジェクトが進行中、自社創薬は18のプログラムが走っている。

 全社員850人のうち、150人がシュレーディンガーセラピューティックグループ(STG)に所属して、創薬あるいは創薬支援の業務に携わっている。コラボレーションのメニューは、受託計算が主体のモデリングサービス、半年から1年ほどをかけて特定のテーマで成果を示すリサーチイネーブルメントサービス、数年間にわたるプロジェクトで前臨床候補品に到達するなどの目標を目指すデザインコラボレーション−に分かれている。日本企業では、武田薬品や大塚製薬などがデザインコラボレーション契約を結んでいるという。

 最新のHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)環境と、開発中の技術を含む先鋭的なソフトを駆使するデジタルケミストリー創薬により、以前は4〜6年かかった研究プロセスを2年以内に短縮することが可能。すでにライセンスアウトされたもの、ヒト臨床試験が進んでいる化合物も数多く、米食品医薬品局(FDA)から抗がん剤として承認された医薬品も2つ出ている。

 特筆されるのは成功確率の高さで、ヒット化合物探索で96%(業界平均は80%)、リード化合物への展開で82%(同60%)、リード最適化で76%(同51%)、新薬臨床試験開始申請で66%(同35%)、臨床試験第1相で56%(同19%)という結果が出ているという。

 同社では、ソフトウエアの機能を単に紹介するだけでなく、創薬研究での成功事例を解説したサイエンティフィックセミナーを今年から開始した。第1回には計算化学者だけでなく、メディシナルケミストや研究マネジメントも参加して盛り上がったという。夏以降もさらに継続する予定だ。日本のソフト事業では材料科学系の伸びも大きく、今年春には日本法人の事務所を大きく拡張した。スタッフ増強も精力的に進める考えだ。


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