CCS特集2023年夏:TSテクノロジー

反応速度論的解析で成果、NEDOプロ内で社会実装へ

 2023.06.28−TSテクノロジーは、山口大学発の化学技術と情報技術を組み合わせ、計算化学の高度利用を推進。受託研究で豊富な実績があり、反応解析、物性推算、触媒開発、分子設計、反応速度シミュレーションなどさまざまなテーマで高精度な計算を実施するほか、母体である山口大学・堀研究室で開発されたTS(遷移状態)データベースを活用したサービス、パッケージソフト開発、技術計算用ハードウエア販売まで幅広い事業を展開している。

 同社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「機能性化学品の連続精密生産プロセス技術の開発」(プロジェクトリーダーは中部大学の山本尚教授)に参画中。プロジェクト期間は2025年度までで、「高効率反応技術の開発」「連続分離精製技術の開発」「合成プロセス設計技術の開発」の3つの研究開発項目から構成されている。同社は3番目の「合成プロセス設計技術の開発」の実施機関として加わっている。

 これは、目的物質を合成するための経路探索から、触媒開発・触媒反応条件の最適化、合成経路候補の高速検証、プロセスシミュレーションと実験データの連携による生産装置設計の最適化までを、デジタル駆動化学によって実現しようというもの。この中で、同社が開発したキネティクス(反応速度)シミュレーションソフト「Kinerator」が使われている。量子化学計算結果を適用して逆反応を含めた各反応の速度差を精密に算出し、反応時間や最終生成比を正しく求めることが可能。反応物の半減期、反応平衡化までの反応時間、生成物の最終生成比や選択率、反応時間や生成比の温度依存性などを明らかにすることができる。

 プロジェクト内では、フルトラニル合成反応を例にこの反応速度論シミュレーションを実施し、生成物の濃度比率の収れんなどの傾向を再現できることを検証したという。今年度には中間評価が予定されているため、計算精度のさらなる向上や補正の導入など、実験結果とのギャップを埋める方法の検討を行い、2024年度以降に要素技術の連結と、実物質での技術検証に進む予定である。合わせて、プロジェクト終了後の社会実装に向けて、「Kinerator」などのソフトウエアを使いやすくするためのユーザーインターフェースの整備も進めていく。

 一方、今年の事業計画では、科学技術計算用並列高速計算機「NGXシリーズ」の販売にあらためて力を入れていく。最新のパーツを揃えて独自に組み上げたマシンで、裾野が広がっている計算化学需要に応えていく。


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