CCS特集2023年冬:モルシス

中国市場で創薬向け拡大、遺伝子変異のDBも提供へ

 2023.12.05−モルシスは、ライフサイエンスとマテリアルサイエンスの両分野で利用できる多彩な研究開発支援ソリューションを提供。モデリング&シミュレーションからインフォマティクスまで、あらゆるニーズに対応できる全方位的な製品群を揃えている。

 ライフサイエンス向けの主力製品は、加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)が開発している統合計算化学システム「MOE」で、利用者は着実に拡大。とくにここ数年は、同社が日本と合わせて担当している中国市場が急拡大している。以前からの大学・研究機関に加え、民間の創薬ベンチャーでの導入が活発化しているとのことだ。日本で行っているユーザー会「MOEフォーラム」も、昨年からは英日中の3カ国語同時通訳でオンライン開催するようになり、今年も中国からの招待講演が注目を集めた。

 機能的には、創薬モダリティのトレンドに対応し、抗体設計やペプチド設計、標的たんぱく質分解誘導薬開発などで注目度が高い。また、低分子創薬でもメディシナルケミスト(メドケム)が使いやすいツールを備えているほか、巨大ライブラリーを活用したスクリーニングなどで需要が伸びている。

 さらに来年に向けては、新しく取り扱いを開始した「DISGENET plus」(西メドバイオインフォマティクス社)の紹介に力を入れる。これは、疾患関連遺伝子と変異のデータベースを統合化したバイオインフォマティクス製品で、疾患との関連が高い順に遺伝子や変異がリストアップされ、その結果をヒートマップやネットワークで表示する機能を持つ。データソースの文献も詳細に確認できることも特徴となっている。こうした情報は毎年10万報を超える論文で報告され、さまざまなリソースに散在しているため、まとめて検索するのは困難だった。探索研究において、遺伝子レベルでターゲットを絞り込みたい時などに有効だという。

 そのほか、西ケモターゲッツの医薬品安全性に関する総合プラットフォームが「Clarityスイート」としてリニューアルされた。薬剤、ターゲット、疾患の3つが安全性情報と完全に結びついたデータベースを備えており、性別・年齢・体重・居住地域の切り口でデータ分析することが可能。新型コロナウイルスの蔓延にともなうデータの偏りも補正済みだという。

 一方、マテリアル分野は米マテリアルズデザインの材料設計支援統合システム「MedeA」が主力で、販売実績も大きな伸びを示している。とくに、ユーザーの関心が高いのが機械学習ポテンシャル(MLP)。第一原理計算に近い精度で大規模・長時間の分子力場シミュレーションを行い、さまざまな材料物性を算出できる。MedeAには、学習済みのMLPと、ユーザーが自分でMLPを作成できるジェネレーターが用意されている。

 さらに、最新バージョンでは、第一原理計算エンジン「VASP」を走らせながら力場の生成・修正を行う“on-the-fly MLFF”機能が実装された。一般的なMLPはすべてのサンプリングを行ったあとにフィッティングを行うが、今回の機能はサンプリングとフィッティングを並行して行う点に特徴がある。作成した力場パラメーターは、分子動力学計算をはじめ、さまざまな物性計算モジュールで利用することができる。


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