CCS特集2024年夏:アフィニティサイエンス

共同研究事業を別会社化、AIでタンパクモデリング

 2024.06.25−アフィニティサイエンスは、計算科学にフォーカスし、薬物設計・材料設計を支援するソフトウエアやサービスを提供中。今年からは、ソフトなどの製品販売と、受託・共同研究などのサービス事業を分離し、新会社「アフィニティネクサス」を設立した。有望な化合物などが発見された際の権利を明確化したいという狙いがあり、将来的にIP(知的財産)ビジネスへの展開も視野に入れている。

 アフィニティネクサスは昨年6月に設立登記していたが、今年4月から本格的な活動に入っている。創薬分野の受託・共同研究を主な対象とし、市販化合物やバーチャルライブラリを用いたインシリコスクリーニング、低分子化合物の最適化・合成展開支援などを行う。必要に応じ、社内で合成実験を行える体制も準備している。また、材料分野でも分子・結晶系を対象とした量子化学/第一原理計算、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)技術を用いた材料開発支援なども行っていく。

 一方、アフィニティサイエンスが販売するソフトウエア製品では、オーストリアのヤサラバイオサイエンスが開発している分子モデリングソフト「YASARA」の人気が高まっている。構造ベース創薬(SBDD)で必要な機能を網羅しており、430を超える多彩なコマンドとマクロでの自動化により、複雑な計算や解析などの自動実行が可能。GPU(グラフィックプロセッサー)も追加の負担なしで使用できる。

 機能強化も随時行われており、サポート契約をすれば常に最新版を利用可能。とくに、4月のバージョンアップでは、人工知能(AI)ベースのタンパク質モデリング機能が搭載された。これまでの古典的なテンプレートベースのホモロジーモデリングに加え、AIベースのフォールディング手法であるAlphaFold、ESMFold、OmegaFoldを組み合わせることができる。ESMFoldとOmegaFoldはYASARAに内蔵されており、予測した構造をホモロジーモデリングのテンプレートに使用可能。AlphaFoldについては、約2億の配列と予測構造が含まれる欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)のAlphaFoldデータベースを検索し、クエリー配列と最も近い構造をテンプレートにすることができる。YASARAにはドッキングシミュレーションプログラムの「AutoDoc Vina」が組み込まれているため、モデリングしたタンパク質に対するドッキング解析をGPU対応でスムーズに行えるのも利点だという。

 そのほかの製品では、エイゾスが提供する「Multi-Sigma」の機能強化が着々と進んでいる。プログラミングなしで、深層学習とベイズ最適化による予測、遺伝的アルゴリズムによる多目的変数に対する最適化を実施することが可能。また、分子設計や構造活性相関解析で人気の伊アルバサイエンス製品(alvaDescなどのスイート)は、セミナーや講習会を継続的に実施することでプロモーションしており、企業ユーザーの利用も多い。さらに、米キューケムの量子化学計算ソフト「Q-Chem」の最新バージョン6.2が5月にリリースされている。


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