CCS特集2024年夏:富士通
バーチャルファーマ実現、受託・共同研究の事業化強化
2024.06.25−富士通は、Healthy Living Life Science事業部において、創薬バリューチェーンを変革し、必要な医薬品をタイムリーに患者に届けることができる“Virtual Pharma”の具体化を目指している。バリューチェーンは研究から開発、生産・サプライチェーン、販売・マーケティングの領域にまで及び、統一されたデジタル基盤・データ基盤・人工知能(AI)基盤が全体を支える構造となっている。
なかでも、創薬研究に関しては、研究プロセスの自動化・迅速化する“Smart Lab”を志向。創薬のDMTA(開発・合成・評価・分析)サイクルを加速する“Digital Laboratory Platform”(DLP)と、革新的な医薬品を設計する“Digital Drug Design”(DDD)−の2つの領域で多彩な製品・ソリューション提供、さらに富士通の独自技術を活用した受託研究(共同研究)でのサービスを実施している。
とくに、創薬モダリティに対応し、ペプチドを含む中分子医薬品研究のDMTAサイクルに対応した「Biodrug Design Accelerator」の注目度が高い。ペプチドリームとの協業を通し開発されたもので、昨年からの新製品だが、すでに実績も出ているという。
一方、英国のチームで推進している化合物発見サービスは、10億以上の仮想ライブラリーをオーダーメードで作成し、量子現象に着想を得たデジタルアニーラでライブラリーを高速に精査、機械学習アルゴリズムを用いて物理化学的性質や薬物動態の評価を行って分子のランク付けを実施、FEP(結合自由エネルギー)やQM/MM(量子力学/分子力学)解析で結合親和性を予測して候補分子を絞り込む。海外のメガファーマでの実績があり、新型コロナウイルス感染症やデング熱などに対する治療薬候補を創出したという。
また、製剤設計やプロセス開発の分野では、複数の要求特性を満たす最適な混合成分、混合比率、プロセス条件を、膨大な組み合わせ候補のなかから探索することが可能。これにもデジタルアニーラや富士通のAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」などが使用されており、医薬品の製剤設計だけでなく、食品・化粧品、化学・材料分野でも評価が高まってきている。
材料研究向けでは、「Material Exploring SaaS」の開発が進んでおり、今年提供開始される予定である。材料研究のためのコグニティブリサーチを行うことのできるサービスで、物質・材料研究機構(NIMS)と共同開発した物性辞書を用い、科学原理に立脚した仮説形成を行う“マテリアルキュレーション”を支援する。生成AIのサポートによって分野横断的に知識を探索できるという。集めた知識やデータを解析し、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)に適応する機能も準備中だ。