CCS特集2024年夏:三井情報
ベイズ最適化でMI支援、実用性を高め事業化検討へ
2024.06.25−三井情報(MKI)は、東京大学大学院理学系研究科の一杉太郎教授らとベイズ最適化を利用したマテリアルズ・インフォマティクス(MI)向けアプリケーションの共同研究を推進しており、プロトタイプをインターネットで無償公開してきた。3年目を迎え、今年の夏にバージョン3にアップグレードする準備を進めており、ひととおりの機能が整うことから、今年は事業化に向けた検討も並行して本格的に進めることにしている。
開発中のMIシステムは、同社のウェブページ上(MKI-bayseoptと検索)で簡単なアンケートに答えることによって誰でもすぐに利用できる。現在公開中のバージョン2には250人ほどのアクセス履歴があり、4分の1がアカデミア、4分の3が企業の研究者だという。説明変数の取り得る範囲を設定し、手持ちの実験データを数件入力、実行ボタンをクリックすると次に実験をするべき説明変数の値が提示される。提案に従って実際に実験したあと、その結果を目的変数としてあらためて入力し、このサイクルを繰り返すことで最適解に近づけていく。こうしたベイズ最適化の効果を実際に試すことができる。
昨年度は、一杉研究室の自動・自律的実験システムと接続し、研究サイクルを自動化して回す実証実験に取り組んだ。また、統計数理研究所の日野英逸教授らと、ベイズ最適化のサイクルをどこで停止すべきか、それを判定する停止基準の共同研究に取り組んだ。東京農工大学の山中晃徳教授らとも、シミュレーションと組み合わせてモデルの再現性を高めるデータ同化の共同研究を行っている。
こうした研究成果を踏まえ、プロトタイプに寄せられた主要な意見・要望を取り入れる形でバージョン3の開発を進行。複数の条件で検討するための多目的最適化に対応してほしい、いろいろな変数に制約条件をつけたいなどの声に応えるとともに、それらをわかりやすくみせるための可視化機能などにもこだわっているという。基本方針として、材料研究の仕事の生産性を向上させることを目的に、実用性の高いシステムに仕上げることを重視していく。