CCS特集2024年夏:分子機能研究所
計算化学の受託研究拡大、学会で大学らと成果発表も
2024.06.25−分子機能研究所は、計算化学と創薬の独自ノウハウを生かし、インシリコスクリーニングを中心とした「MFDDインシリコ創薬受託研究サービス」を提供。今年4月に、大学・研究機関に試薬・理化学機器を販売している理科研(森川徹社長)と代理店契約を締結し、さらなる展開を図っていく。
MFDD インシリコ創薬受託研究サービスは単純な受託計算ではなく、事前に検証や論文調査を行い、最先端の構造ベース創薬(SBDD)/リガンドベース創薬(LBDD)などのインシリコ創薬技術を駆使して、最善の手法で実施することが特徴となっている。ペプチドや核酸、あるいは低分子薬など対象はさまざまであり、最近は食品や医薬部外品、化粧品などのテーマも増えているという。研究成果を共同執筆した学術論文がこれまでに9報出されており、さらにドラッグリポジショニングで新たな薬効が発見されたことや、ホモロジーモデリングによる最新の成果について、2報の論文が執筆中となっている。
使用するソフトウエアは、複雑な生体高分子系のモデリングやタンパク質などの全系量子化学計算を実行したり、生体高分子とリガンドとのドッキングシミュレーションやバーチャルスクリーニングを高精度に実施したりする製品を自社開発。加えて、量子化学計算プログラムのGaussianのほか、各種のOSS(オープンソースソフトウエア)を駆使している。
また、同社が研究代表となって、文部科学省の「共同利用・共同研究拠点」制度に基づく「生体医歯工学共同研究拠点共同研究プロジェクト」に採択された案件もあり、2024年度も前年度に続き、東京医科歯科大学、お茶の水女子大学、横浜国立大学との共同での「構造ベース創薬によるRARγサブタイプ選択的アンタゴニストの開発研究」を進行中。さらに、新たに横浜工業会の産学連携に対する研究開発助成で、「原子動力学ソフトウェアによる分子ドッキング計算の創薬応用への評価」が採択された。学会発表としては、7月17日に行われる日本炎症・再生医学会で東京大学医学部とのドラッグリポジショニングの成果が、「IFIH1遺伝子変異によるインターフェロノパチーに対するiPS細胞創薬研究」のタイトルでポスター発表される。
なお、今回、MFDDの代理店になった理科研は「先端科学の情報発信源」を目指し、情報・製品・サービスの発信プラットフォーム「サイサチ」を展開中。インシリコ創薬の分野にもサービスを広げることになる。