CCS特集2024年夏:POLYMERIZE
独自AIで高い予測精度、日本法人の組織体制も強化
2024.06.25−シンガポールに本社を置くPOLYMERIZEは、人工知能(AI)で材料開発に革新をもたらすマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を専門とするスタートアップ。グローバルに事業を展開しているが、日本企業の顧客が多く、昨年に日本法人を設立し、技術サポート体制も強化してきている。とくに、AIモデルの独自性に強みがあり、順問題も逆問題も予測精度が高い。これにより、実際に行う実験の回数を大幅に削減できるという効果が出るという。
同社の設立は2020年。2021年に米国で行われたAI/MIのベンチャーキャピタルプログラムに参加した際、日本企業2社とのマッチングに成功したことが好機になった。さっそくPcC(概念実証)プロジェクトがスタートし、実用的なMIシステムに仕上げていった。この間、社員数は創業者2人から40人へ増加。日本法人のほか、インドに開発拠点がある。日本法人のスタッフは現在6人だが、来年の初めごろまでに12〜15人への増員を図る。技術サポートのスタッフも強化する。グローバルの顧客数は約80社となっている。自動車、接着剤、塗料・コーティング、特殊化学品、包装材料などの分野で実績がある。
具体的な製品は、MIのためのAI管理プラットフォームとしてフルに機能を備えた「Polymerize Labs」と、簡易版で実験データの管理に特化した「Polymerize Connect」の2つがある。MIの導入は、研究開発のやり方自体を変革する意味があるため、同社では現場目線で伴走支援することを心がけているという。基本的にクラウドで利用するサービスで、データのアップロードのしやすさ、全体的な使いやすさなど、現場の研究者が何をしたいか、どう使いたいかなどの視点を重視している。
最大の特徴は同社独自のAIモデルで、30種類のアルゴリズムの中からシステム側が最適なものを選択してモデル化を行う。基本的にユーザーにはデータサイエンスの高度な知識は不要。一例として、わずか20個のデータで作成したモデルが、最初のサイクルで90%以上の物性予測精度を達成できた例がある。通常は数回のサイクルを回す必要があり、追加で実験して精度を上げていくが、同社のソフトを利用すれば実際の実験回数を大幅に削減できる。また、原材料の物性(メタデータ)を分析に用いることで、どういう材料を使えば目標を達成できるかという逆問題において、1サイクルの処理で専門家が妥当とみなせる結果を引き出すことができたということだ。
今年の初めには生成AIで注目される大規模言語モデル(LLM)を応用した「PolyGPT」も開発した。研究論文や技術資料などを読み込ませ、検索したり要約させたりすることができる。多言語に対応しており、論文を読む時間を大幅に節約できるとして好評を博している。