ダッソー・システムズのクレア・ビオ副社長が会見

ライフサイエンス&ヘルスケア事業、バーチャルで治療効果など確認

 2025.06.28−ダッソー・システムズは27日、クレア・ビオ(Claire Biot)ライフサイエンス&ヘルスケア業界担当副社長による記者説明会を開催、同事業に関連する最近のプロジェクト事例などを紹介した。中枢神経系治療薬の脳内への分布シミュレーション、インシリコ臨床試験への取り組み、バーチャル心臓を使った治療−などを進めている。日本の製薬メーカーや医療機器メーカー、医療従事者や患者などからのさまざまなニーズをとらえ、「バーチャルツイン技術で貢献していきたい」(ビオ副社長)としている。

 同社は、バーチャルとリアル(V+R)が融合したバーチャルツインを機械や構造物、都市空間などに応用するとともに、人間の体に対応した「バーチャルヒューマンツイン」の開発も進めている。今回、ビオ副社長はそうした中のいくつかのプロジェクトを紹介した。

 まずは、「大手のバイオ医薬品メーカーと進めている中枢神経系治療薬開発。血液脳関門(BBB)が存在するため、脳内に十分な量の薬剤を到達させることが難しい」とビオ副社長。このため、バーチャル脳モデルを用いて、薬剤を注入する位置を最適化し、薬剤が血液や脊髄液に乗って脳内に分布するシミュレーションを実行した。このモデルは、ヒトの脳だけでなく、ヒト以外の霊長類の脳にも対応しているため、動物実験を減らす効果もあるという。

 2番目は、FDA(米食品薬品局)と共同で進めたインシリコ臨床試験プロジェクト。標準治療薬のリアルデータと同等の特性を示すバーチャルモデルに対して新薬を投与した際の振る舞いを予測させるもので、バーチャル患者群に対する臨床試験をインシリコで行う。実際の患者を用意する費用やリスクを削減でき、開発機関も大幅に短縮できるという。

 3つ目はバーチャル心臓を使った新しい治療法の開発で、心臓弁膜症患者の少数の症例データから、AIを用いて僧帽弁の不具合を持つ心臓のパターンを大量に生成、僧帽弁をクリップで留めて逆流を防ぐ弁膜症手術を多くのバーチャル心臓に実施した。その結果、68%の患者で効果があることがわかり、論文発表されたという。

 同社のライフサイエンス&ヘルスケア事業は、バーチャルツインで医療に革新をもたらすとともに、個人の健康を守るための医師や病院の役割をも支援していくことが狙い。ビオ副社長は、「患者が実験台になってはならない。まずはバーチャルで治療し、その効果を実証・確認するべきである。また、こうした先進的な医療が手ごろな費用で受けられるようにも働きかけていきたい」としている。

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