CCS特集2025年夏:EAGLYS
秘密計算で安全なMI化、エクセルでのデータ管理も
2025.06.24−EAGLYSは、得意とする秘密計算技術を利用して機密性の高い研究データを安全に取り扱えるようにするマテリアルズ・インフォマティクス(MI)システム「EAGLYS ALCHEMISTA」を開発している。いくつかの企業とPoC(概念実証)プロジェクトを進めるとともに、関連する新製品の追加投入、販売体制の強化なども行い、順調に事業拡大を図っている。
「EAGLYS ALCHEMISTA」は、材料メーカーと顧客企業が実験・評価データや秘伝のレシピなどを暗号化によって秘匿しながらデータを共有して人工知能(AI)モデルを構築し、互いに要求を“すり合わせ”ながら材料研究ができる環境を提供する。昨年10月に、ガウス過程回帰やベイズ最適化に対応する機能を、TEE(Trusted Execution Environment)と呼ばれる秘密計算機能を使って実装した。MIを実施するために要望されていた機能だったが、逆にMI以外の引き合いも増え、秘密計算を使ったデータサイエンスのニーズが拡大しているという。今後の機能拡張は、とくにすり合わせ開発をサポートする機能を重点的に取り上げていく計画である。
また、社内だけでMIを実施し、顧客などとのやりとりがなければ秘密計算を使う必要はない。そこで、実験データプラットフォームとして利用できる「EAGLYS ALCHEMISTA Labs」を新たに製品化した。Excelに記載された実験データの「取り込み、保管、検索」、MIへのデータ活用のための「データ整形」など、データ活用に必要なデータ管理機能をワンストップで実現できる。とくに、Excelからそのまま取り込みが可能で、データはExcelシート単位で保管し、データ項目や物質名などで直接検索することで、ほしいデータをすぐにみつけることが可能。複数のシートからデータを統合・結合し、機械学習や分析用のデータを生成し、CSVで出力することができる。表記揺れの解消や、外れ値処理、欠損補完などを行う機能も備えている。
「EAGLYS ALCHEMISTA Labs」は今月からベータ版がリリースされたばかり。すでに反響があり、化学以外の製造業や食品メーカーなどでPoCプロジェクトの実施も決まりつつあるという。画像データを取り扱う機能も搭載する予定で、将来的には構造式も扱えるようにしていく。
一方、販売体制としては、長瀬産業、第一実業、pluszeroの3社がパートナーとなって、「EAGLYS ALCHEMISTA」および「EAGLYS ALCHEMISTA Labs」の普及を進めている。この中で、pluszeroは三井物産ケミカルと組んで、EAGLYSと合わせた3社連携により化学業界へのMI浸透を図っており、データ整備からデータ分析、データ連携までを加速させる取り組みに力を入れている。