CCS特集2025年夏:化学情報協会

機械翻訳サービスを強化、生成AIで後編集を自動化

 2025.06.24−化学情報協会は、科学技術分野の文献・特許、化学物質情報の検索ソリューション、有期・無機化合物の結晶構造や物性情報のデータベース、創薬支援のためのソフトウエアやコンサルティングサービスなどを提供する一方、独自のノウハウを武器にした機械翻訳サービスでも実績を伸ばしている。

 同協会の機械翻訳サービスは、特許・文献を“読む”ことに特化した「JAICI AutoTrans」、“読むと書く”両方に対応して正式な翻訳文書を仕上げるための「JAICI ProTranslator EXPRESS-Light」の2種類がある。後者は段階的に機能強化してきているが、今年4月に生成AI(人工知能)を利用して翻訳作業の効率や翻訳品質を向上させるオプションサービスを追加した。

 これは、「PostEditPro」と呼ばれるもので、日本特許翻訳が開発したシステムを統合している。現在は英日と日英に対応しており、機械翻訳の出力を自動的に改善することで、熟練した翻訳者による後編集を模倣することが可能。大規模言語モデル(LLM)を用いて後編集プロセスを自動化する。機械翻訳では、専門用語の訳が揺れることがあるほか、未知語に対応できなかったり、原文にないフレーズが追加される湧き出しや、複雑な長文で発生しやすい訳抜けが生じたりするなどの不具合に対応することが可能。ウェブ上で原文と訳文を対照させながら編集できるほか、「JAICI ProTranslator EXPRESS-Light」に付属するコンピューター支援翻訳(CAT)ツール「memoQ」を使って翻訳文書を仕上げることもできる。

 また、「PostEditPro」とは別の機能だが、日本語と英語の対応する文書を生成AIに学習させて、自動的に翻訳メモリー(定型文が同じ表現になるように登録しておく)を作成する「リソースジェネレーター」も備えている。こうした機能も併用することで、翻訳文の作成をさらに効率化できる。

 「JAICI ProTranslator EXPRESS-Light」については、企業の知財部門や特許事務所などでの利用が拡大しており、相互にサービスを共有して、機械翻訳から仕上げまでをスムーズに進める例もある。また、複数の翻訳先に依頼する場合でも、自社用の翻訳メモリーや用語集を使用することで翻訳結果の揺れを抑える運用も可能になるという。


ニュースファイルのトップに戻る