CCS特集2025年夏:三井情報

自動・自律実験の実現へ、試作版MIシステムを強化

 2025.06.24−三井情報(MKI)は、東京大学大学院理学系研究科の一杉太郎教授および中山亮特任助教と、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を推進するためのアプリケーションの共同研究を推進。ベイズ最適化を簡単に試すことができる試作版をインターネット上で無償公開している。機能強化を図りつつ4年目となるが、コンスタントに利用者があり、民間企業の研究者からのアクセスが多い。本格的な事業化を目指し、自動・自律実験を支援するデジタルラボソリューションとしての展開を図りたいとしている。

 試作版MIシステムは、同社のウェブページ上(MKI-bayseoptと検索)で簡単なアンケートに答えることによって誰でもすぐに利用できる。利用者の要望を取り入れるかたちで、昨年9月にバージョン3にアップデートし、目的変数を2つ以上設定して多目的最適化が実行できるようにした。また、説明変数の量的制約機能を搭載し、説明変数間の関係(例:合計して100%)を等式を使って記述できるようにした。Excel形式でデータのアップロード/ダウンロードもできるようになっている。

 現在同社は、一杉教授らのグループが日本ファインセラミックス協会(JFCA)と日本分析機器工業会(JAIMA)とともに立ち上げたデジタルラボラトリー研究会の活動にも参加。今年5月には新たなプロジェクトとして、研究会メンバーの8社とJFCAが集まり、東京大学本郷キャンパスに自動・自律実験システムを実際に構築する協動ラボを開設した。2年間の実証実験を行う計画で、1年後に実際に動くシステムを用意するという。薄膜状態で新物質を探索することを狙い、セラミックス材料や粉体を原料とする材料の合成・焼成・特性評価・分析の全自動化・自律化を図る。

 具体的には、合成装置(スパッタ成膜装置)と各種計測・分析装置(X線回折、ラマン分光、紫外可視分光、走査型電子顕微鏡、エネルギー分散型X線分光)が接続され、ロボットアームが装置間で試料をハンドリングするとともに、データも自動的に流れ、実験結果は自動的に解析される。個々の制御や全体のオーケストレーションを三井情報のIT技術で実現するかたちになるということだ。

 一方、試作版MIシステムは、統計数理研究所の日野英逸教授らと、ベイズ最適化のサイクルをどこで停止すべきか、それを判定する停止基準の共同研究に取り組んでおり、東京農工大学の山中晃徳教授らとも、シミュレーションと組み合わせてモデルの再現性を高めるデータ同化の共同研究を行っている。いずれにしても、ユーザーの要望を反映させて実用性を高めていく考えだ。


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