CCS特集2025年夏:分子機能研究所

独自ノウハウで創薬支援、インシリコへ量子化学適用

 2025.06.24−分子機能研究所は、計算化学を利用してインシリコ創薬を支援する専門ベンダー。構造ベース創薬(SBDD)/リガンドベース創薬(LBDD)の最新手法を用いて受託研究のスタイルで実績があり、今年は製薬メーカーからロイヤリティを受領する成果をあげている。今後はとくに量子化学計算を活用して、巨大生体高分子系のシミュレーション・解析サービスを充実させたいとしている。

 同社は、「MFDDインシリコ創薬受託研究サービス」の名称で、企業や大学などにサービスを提供。単純な計算受託ではなく、事前に検証や論文調査を行い、最新の理論や技術を駆使して課題解決を図る。研究成果は共著論文として発表される例も多く、現在までに12報が出版されており、口コミでの広がりもあるという。とくに、大学と実施した共同研究で、ドラッグリポジショニングを目的としたスクリーニングにより、自己免疫疾患の候補化合物を発見した実績に関する論文を準備中。今月、バルセロナで開かれた国際会議「EULAR 2025」(European Alliance of Associations for Rheumatology)で発表が行われた。また、同社独自の活動としては、横浜工業会の産学連携に対する研究開発援助を受けて実施した「原子動力学ソフトウェアによる分子ドッキング計算の創薬応用への評価」について、7月11日に成果報告会が行われる。

 現状、分子力学法を使ってドッキングやスクリーニングを行うことが多いが、同社では次世代技術として量子化学計算をインシリコ創薬に適用する準備を進めてきている。タンパク質−リガンド複合体、DNA−リガンド複合体、RNA−リガンド複合体、タンパク質−タンパク質複合体、タンパク質−ペプチド複合体、抗原抗体複合体、タンパク質−核酸−金属−リガンド−水からなる巨大複合体などを対象に、大規模量子化学計算、量子力学/分子力学(QM/MM)計算、電子相関を考慮した振動解析による結合自由エネルギー計算、全系量子化学計算などを実施。分子力学計算では不可能な、副作用を抑制するための受容体サブタイプ選択性などの未踏の研究課題にも対応していく。大規模な計算能力が必要になるため、スーパーコンピューターを活用して行う用意もあるという。

 同社は、米ハイパーキューブの統合分子モデリングソフト「HyperChem」をベースに、モデリングやドッキングのためのソフトウエアを自社開発しているほか、量子化学計算プログラムのGaussianのほか、各種のOSS(オープンソースソフトウエア)を駆使して研究活動を行っている。HyperChemについては国内代理店としても活動しており、問い合わせに対応するケースも少なくない。

 なお、理化学機器販売の理科研が昨年からMFDDの代理店を務めているが、協業の成果も徐々にあらわれているという。


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