CCS特集2025年夏:QuesTek Japan

新材料開発の基盤を提供、物理と機械学習で合金設計

 2025.06.24−QuesTek Japanは、米QuesTekと伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の合弁会社として2020年に設立された。本社は1997年設立で、米国で国家プロジェクトとして実施されたマテリアル・ゲノム・イニシアティブ(MGI)の先駆けともなった技術を持ち、これまでに350以上のプロジェクトを実施してきているという。

 同社は、マテリアルズ・バイ・デザインと呼ばれる独自のICME(インテグレーテッド・コンピューテーショナル・マテリアル・エンジニアリング)に基づいたソリューションを構築している。合金開発をターゲットとしており、材料プロセス、材料組成、材料特性、材料性能の間の相関関係を見いだし、物理ベースシミュレーションとデータサイエンスの両方を駆使して要求性能を満たす材料設計やプロセス最適化を行う。10年以上前にICMEをアップルに技術移転したことがあり、iPhoneやApple Watchの材料開発に利用された実績があるほか、昨年打ち上げられたSpaceXのロケット(発射台への回収に成功)向けのカスタム材料開発に成功したという。

 現在は、ICMEを利用した材料関連コンサルティングと、ICMEをクラウド経由で直接利用できるようにした材料開発プラットフォーム「ICMD」の2本立てでビジネスを展開。コンサルティングでは、新規の材料開発、既存材料の性能改善、プロセス改善などを受託研究のスタイルで実施する。物理シミュレーションが基本となるため、データ数が少なくても実施でき、実験は最小限ですむという。新材料に関しては、試作からスケールアップ、量産化の検討までもサポートできるとしている。

 「ICMD」は、材料開発の内製化を支援するバーチャルプライベートクラウドのSaaS(サービスとしてのソフトウエア)であり、QuesTekが有するデータベースや計算モデルと、材料設計、資格認証、データ分析のためのツールキットを利用できる。単純なソフトウエアとは異なり、プラットフォーム内でさまざまなユーザーがプロジェクトを作成し、連携しながら活用できる点に特徴があるようだ。

 また、QuesTek JapanはCTCの科学システム本部と連携した事業展開を行っており、CTCからはスウェーデンのサーモカルク社が開発している統合型熱力学計算ソフト「Thermo-Calc」も提供している。合金設計・プロセス設計で基本となる状態図のほか、凝固計算や熱特性、電気特性などさまざまな計算機能があり、拡散や析出のような速度論の計算も扱うことが可能。ICMEとの連携も容易だという。


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