CCS特集2025年夏:ウェイブファクション
最新版へ順調に移行進展、天然物の配座解析で高評価
2025.06.24−ウェイブファンクションは、昨年リリースした分子モデリングソフトの最新版「Spartan '24」が好調。すでに7割ほどのユーザーがバージョンアップしたという。同社の日本支店では、これまで通り関連する学会へ出展し、新規ユーザーの目に触れる機会を増やす一方、既存ユーザーへの訪問にも力を入れ、関係強化・ユーザーコミュニケーション深化に努めていく。
Spartanは、非経験的分子軌道法の本格的な機能を備えながら、大学の学部教育や高等専門学校(高専)での教育用途でも使用されるなど、使いやすさ、わかりやすさを特徴としている。データベースを備えていてさまざまな分子を簡単に呼び出せることに加えて、美しいグラフィック表示で分子の世界を精密に描き出すことが可能。
Spartan '24の製品構成は、利用できるCPUコア数が16コアまでの「Spartan '24 Parallel Suite」と、16コア以上無制限に対応する「Spartan '24 Parallel Suite Gt16」の2種類がある。企業ユーザーは、制限のないGt16版を選択するケースが多いため、Linux上で本格的な計算環境を整備してフルに利用しているとみられる。とくに今回のSpartan '24では大学・民間とも3年間保守付でのライセンス契約が増えているという。
機能面で評価が高いのが、天然物などの複雑で柔軟な分子構造を核磁気共鳴(NMR)データを用いて自動的に決定する「DFTを利用した化学シフト計算機能」。Spartan '24では独自に開発した5つのニューラルネットワーク(NN)モデルを採用することで、この処理の高速化を達成した。具体的には、配座異性体のエネルギー計算(分子力学)、密度汎関数法(DFT)による構造予測、異性体のエネルギー計算(ボルツマン分布)、エネルギー計算の改善、マルチステップのワークフローなどの処理性能を劇的に改善している。
昨年11月には、この機能の共同開発者である弘前大学・橋本勝教授を招いてユーザー会を開催。天然物の配座解析とNMR予測に関する機能にテーマを絞って行われたが、活発で有意義な議論・意見交換が行われたという。将来的な機能拡張の計画もあるということで、今後の推移も注目されるだろう。