CCSニュースファイル
   2003年7−9月

  • Row2テクノロジーズが有機合成経路設計支援システムを国内販売
     2003.07.17−米Row2テクノロジーズ(本社・ニュージャージー州、ケン・バクシCEO)は、新規化合物の合成経路設計を支援するソフトウエア「ChemSpire」(商品名)の日本における本格的な販売活動を開始した。医薬、農薬、香料、各種ファインケミカル、ポリマーなど、さまざまな有機化合物を対象にでき、生産スケールやコストを考慮した商業的な合成プロセスの開発・検討に役立つ。日本事務所(二宮一夫代表)を通じて販売するが、同社ではさらに特定のターゲットの経路探索を請け負うコンサルンティングサービス「ルートデザイン」も提供しており、ソフト導入前の技術検証の目的も兼ねて積極的に紹介していきたい考えだ。
  • 日立ソフトが遺伝子索引情報配信サービスにナレッジマイニング機能統合
     2003.07.31−日立ソフトウェアエンジニアリングは、遺伝子索引情報配信サービス「DNASISジーンインデックス」(商品名)を機能強化し、8月から新たな内容のサービスを開始する。テキストマイニングエンジンを統合したナレッジマイニング機能を追加したもので、これまでの通常のデータベース検索では取り出せなかった“知識”を掘り起こすことが可能になる。利用料金は、ASP(アプリケーションサービスプロバイダー)形式で年間240万円から。今年度にサービス全体で10億円の売り上げを見込んでいる。
  • インフォコムが加ファーマアルゴリズム社のQSARソリューションを発売
     2003.08.02−インフォコムは、加ファーマアルゴリズム(アラナス・ペトラウスカス社長)と代理店契約を締結、新しい構造活性相関(QSAR)解析ツールの販売を開始した。ハイスループットスクリーニング(HTS)などの実験データを用いて構造と各種物性との相関を統計解析し、予測のための相関式を自分でつくり上げることができる。複数の相関式を多段階に組み合わせ、大量の候補化合物群を一気にフィルタリングするような使い方も可能。WindowsNT/2000対応で、ソフトウエア価格は650万円から。
  • 東京大学教養学部が理科系全学生対象にCCSを利用した計算機実験
     2003.08.05−東京大学は、理科系前期過程(教養学部)の全学生を対象にする基礎実験種目にコンピューターケミストリーシステム(CCS)を利用した計算機実験を本格的に取り入れ、初年度に当たる1年間のカリキュラムを終了させた。専用設備として20台のパソコンと分子軌道法ソフトを用意し、実際の実験を行い、その結果を理論化学計算で確認・考察するというスタイルで教育を行った。視覚化によって分子の世界に興味を抱き、授業後に自宅のパソコンで参考実験を行う学生が増えるなど、教員スタッフはかなりの手応えを感じている。2,000人近い学生を対象にしたCCS教育はこれまでにほとんど例がなく、その教育成果が注目される。
  • 理化学研究所とNECソフトがシロイヌナズナの突然変異体DBを開発・公開
     2003.09.03−理化学研究所とNECソフトは2日、シロイヌナズナの突然変異体データベース(DB)「アクティベーション・タグライン・データベース」を共同で構築、3日から公開を開始すると発表した。キーワード検索や相同性検索、たん白質ドメイン検索、遺伝子発現制御配列検索など、複合的な検索機能を持っており、実験データを直接入力して自動的にDB検索する機能も備えている。利用者は、約1,000種類におよぶ突然変異体の解析が可能。
  • ウェイブファンクションがSPARTANの学生版を来春正式に商品化
     2003.09.09−ウェイブファンクションは、分子軌道法をベースにした分子設計支援システム「SPARTAN」(商品名)の学生向けバージョンを正式に製品化し、来年春から国内で本格的に販売開始する。教育機関を対象にしており、ソフト価格は10本で32万円。マニュアルも完全に日本語化、学生でも直感的に操作できるのが特徴だという。近年、コンピューターケミストリーシステム(CCS)を教育用に導入することが注目されており、いくつかの先進事例でも高い教育効果が確認されている。ただ、もともとは企業が研究ツールとして使用していたもので、教育用としては高機能すぎて高価だという問題もあった。教育分野で高いシェアを持つSPARTANに初の学生版が登場したことで、今後の市場拡大が期待される。
  • アクセルリスとNTTデータが理研GSCにドッキングシミュレーション用グリッド
     2003.09.17−アクセルリスとNTTTデータは16日、薬物分子と標的たん白質とのドッキングシミュレーションを網羅的に行うグリッドコンピューティングシステムを理化学研究所ゲノム科学総合研究センター(GSC)に導入、稼働を開始したと発表した。これは、GSCたん白質構造・機能研究グループの松尾洋・計算プロテオミクス研究チームリーダーらのグループによるプロジェクトで、医薬品の作用・副作用の分子メカニズムに関する研究に寄与する。ライフサイエンス分野の大規模計算に対するグリッドの有効性を証明するとともに、バーチャルドッキングの技術的発展にも大きな貢献をすると期待される。
  • 新日鉄ソリューションズが創薬研究向けナレッジシステムを共同開発
     2003.09.18−新日鉄ソリューションズは、製薬会社向けのトータルIT(情報技術)ソリューションサービスに本格的に乗り出す。日本MDLインフォメーションシステムズおよびセラーテムテクノロジーと提携し、創薬研究において取り扱う化合物情報と生物学的アッセイ試験データ、生体組織の電子顕微鏡写真などの画像データを統合する「創薬ナレッジポータルシステム」の提案活動を開始した。ナレッジを体系化してシステム構想をまとめるITコンサルティングから、具体的なシステムの設計・開発・運用保守までライフサイクル全般にわたるトータルサービスとして提供するもの。実際には幅広いシステム化ニーズに応じていく。
  • MDL日本ユーザー会が開催、発がん性予測ソフトなど新製品を公開
     2003.09.22−2003年度のMDL日本ユーザー会が、9月10日と11日の両日、大阪・中之島の大阪府立国際会議場において開催された。初日の冒頭に米MDLインフォメーションシステムズのラーズ・バーフォド上級副社長が「新薬開発におけるITの貢献」と題して基調講演を行い、同社の最新の製品戦略などについて解説した。とくに、業界標準対応の統合フレームワークとしての「MDL Isentris」(アイセントリス)、データベース(DB)の統合化によって情報検索に革新をもたらす「DiscoveryGate」(ディスカバリーゲート)、米食品医薬品局(FDA)との共同プロジェクトで開発した医薬品の発がん性予測ツール「MDL QSAR Carcinogenicityモジュール」の紹介などが注目された。
  • トゥインコムとACCESSがPDAからISISに無線アクセスするシステムを開発
     2003.09.26−eビジネスやユビキタスコンピューティングでユニークな技術を持つトゥインコミュニケーション(本社・東京都中央区、町井俊也社長)の米国法人であるトゥインコミュニケーションズオブアメリカ(本社・カリフォルニア州、晝間信治社長)と携帯電話向けブラウザーのトップ企業であるACCESS(本社・東京都千代田区、荒川亨社長)は、日本MDLインフォメーションシステムズの統合化学情報管理システム「ISIS」に対してPDA(携帯情報端末)から無線アクセスするシステムを共同で開発、先ごろ行われたMDL日本ユーザー会に参考出品した。バーコードを読み取る機能を内蔵しており、研究所内などの化学物質の管理にも役立つと期待される。日本MDLを含めた3社で引き続き協業関係を築き、事業化・製品化の可能性を探っていくことにしている。
  • NECが高知医科大とHLA結合ペプチド予測ソフトを開発、事業化へ
     2003.9.30−NECは29日、高知医科大学の宇高恵子教授らのグループとの共同研究により、ヒトの免疫機構に作用するペプチド医薬品の開発に役立つシステムを来年1月に完成させると発表した。細胞内のHLA(ヒト白血球抗原)分子の特定の型に結合するペプチドを70−80%という高精度で予測するシステムで、がんやエイズ、各種アレルギー症などの新薬開発に結びつく可能性がある。NECでは、このシステムを利用して製薬会社向けにデータベース提供や解析受託などのサービスを実施。実際に新薬が開発された場合、ロイヤリティ収入を中心に5年後に約10億円の売り上げにつながると見込んでいる。

 

**************<一般ITニュース>***************

 

  • エンジニアス・ジャパンが協調設計プラットホームFIPERを製品化
     2003.07.05−エンジニアス・ジャパン(本社・横浜市港北区、加藤毅彦社長)は、分散した開発拠点とツール、ワークフローなどを統合し、企業間や部門間にまたがる協調的な設計環境を実現する基盤ソフトウエア「FIPER」(ファイパー)を製品化し、販売を開始した。米NIST(連邦標準技術局)プロジェクトとして開発されている技術で、10月から一般向けに出荷を開始する。とくに、自動車産業向けでは、NECと戦略提携を結び、日米で50名規模のタスクチームを組んでグローバルに売り込みを図っていく。国内では、向こう3年間に200システムの販売を見込んでいる。
  • 富士通がアプリケーション保守のアウトソーシングサービスを開始
     2003.07.10−富士通は9日、顧客の情報システムの保守業務を総合的に請け負うアウトソーシングサービスを体系化し、「アプリケーションポートフォリオマネジメント」(APM)の名称で提供を開始したと発表した。長年にわたるプログラム修正や手直しの累積によって複雑化してしまったアプリケーション資産全体を評価し、その投資価値や効果、優先度を継続的に明確化することで、最適な戦略的IT(情報技術)環境への変革を可能にする。今年度内に1,000名の事業体制を整備し、初年度1,300億円、2005年度に2,300億円の売り上げを見込んでいる。
  • マイクロソフトEDC2003:テリー・マイヤーソン氏基調講演
     2003.08.07−マイクロソフトは5日、パシフィコ横浜で「マイクロソフト・エンタープライズ・デプロイメント・コンファレンス2003」(EDC)を開催し、プログラムマネジメント・エクスチェンジサーバーグループディレクターのテリー・マイヤーソン氏が「可能性の扉を開く−インテグレーテッドプラットホームが創造する情報システムの価値」と題する基調講演を行った。このイベントは、情報システムの管理・運用・展開の観点から最新の技術情報を提供するもので、6日までに45のセッションが行われる。基調講演では、マイクロソフトの統合化されたプラットホーム製品群を利用することで、少ない投資で大きなビジネス価値を引き出すことができることが強調された。
  • マイクロソフトTech・Ed2003:クリフ・リーブス氏基調講演
     2003.08.08−マイクロソフトは7日、例年恒例のデベロッパーズコンファレンス「マイクロソフトTech・Ed2003」をパシフィコ横浜で開幕、米本社のプラットホームストラレテジーグループのゼネラルマネジャーであるクリフ・リーブス氏が「可能性の扉を開く−開発環境におけるITの新たな展望」と題して基調講演を行った。とくに、既存のアプリケーション資産を生かしながら柔軟にビジネスプロセスの統合を実現するウェブサービスや、その基盤となる“ドットネット”(Windows .NET)が着実に浸透していることが強調された。
  • ターボリナックスがWindows置き換えを狙う新デスクトップOSを10月発売
     2003.08.21−Linuxの国内ディストリビューション大手であるターボリナックスは、10月に新しいデスクトップ向けLinux OS(基本ソフト)製品「Turbolinux Desktop」(ターボリナックスデスクトップ、開発コード名 Suzuka)を発売し、ウィンドウズの置き換えを本格的に進めていく。このため、ウィンドウズとの互換性や共存性を徹底的に追求しており、ネットワークを介して簡単にウィンドウズ機にアクセスしてワードやエクセルのファイルを編集したりすることが可能。見た目や操作法もウィンドウズそっくりに合わせており、ウィンドウズユーザーの違和感を取り除くように配慮した。とくに、企業ユーザーへの浸透を積極的に狙っていく。
  • マイクロソフトがBlasterワーム事件のてん末を説明、個人向けで課題
     2003.08.22−マイクロソフトは20日、プレス向けセミナーを開催し、大きな被害を出した“ブラスター(Blaster)ワーム”事件に関する同社の取り組み状況や今後の対応策などについて説明した。同社の東貴彦取締役経営戦略担当は、「今回のぜい弱性は1ヵ月前に発見され、順次対応を進めてきていた。企業や産業界のインフラへの被害を最小限に食い止められたことは評価できるが、一般消費者に被害が広がったことについては反省点が多かった。全社をあげて“信頼のおけるコンピューティング”(Trustworthy Computing)を推進してきただけに、今回の事件は悔しいし残念だ。ウイルス制作者への強い憤りを感じる」と総括した。緊急対策用のCD-ROMを20万枚配布する計画も明らかにされた。
  • 富士通が試作レスを実現する三次元仮想設計シミュレーターを発売
     2003.08.29−富士通は28日、電子機器や機械製品などの新製品開発における試作を無くし、コスト削減や期間短縮を実現する三次元仮想設計支援シミュレーター「VPS V20」(商品名)を発売したと発表した。1996年に社内利用向けに開発し、1999年秋から外販しているシステムで、すでに104社のユーザーがいる。今回の最新版は、最初のメジャーバージョンアップに当たり、ユーザーが自由にカスタマイズができる開発環境を初めて提供するほか、仮想モデルを用いて設計データをさまざまな方面から検証するための各種機能を充実させた。ウィンドウズで利用でき、ソフト価格は基本モジュールで250万円。今後2年間に3,000本の販売を見込んでいる。

 

 


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