CCSニュースファイル
   1999年7−9月

 1999.07.06−計算化学に携わる者にとって、昨年のノーベル化学賞をノースウエスタン大学のジョン・A・ポープル教授が受賞したことは、ソフト開発が学問的業績として高く評価されたという意味でも一つの“大事件”であった。そのポープル教授が現在、オーナー兼開発者として在席しているのが米キューケム社という耳慣れない企業。ポープル教授の直接の教え子だったピーター・ギル博士が93年に30才の若さで設立したベンダーだ。96年から独自の分子軌道法(MO)ソフト「Q-Chem」をリリースし、100ユーザーの実績を持っている。「医薬品開発や生化学、材料科学分野などで具体的な応用展開が可能になることにより、MO計算への関心はますます高まるだろう。最新のコンピューター環境に対応したQ-Chemで、多くの人にMO計算への道を開かせたい」と話すギル社長(ノッチンガム大学教授)に、開発の狙いや今後の戦略を聞いた。

 1999.07.07−住商エレクトロニクスは、インターネットを利用して科学者・技術者向けのソフトウエアを販売する会員制サービス「ネットサイエンス」をデジタルウェア(本社・東京都新宿区、田中健悟社長)から買収、このほど100%出資の子会社「サイネックス」(緒方昭一社長・住商エレクトロニクス専務を兼任)を設立し、7月から正式にサービスを開始した。本年度に売り上げ3億円、次年度に5億5,000万円を見込んでおり、この時点で経常黒字化を達成する計画。

 1999.08.11−創薬ベンチャーの英ケンブリッジコンビナトリアルは、新薬の候補化合物の設計と合成で山ノ内製薬と契約を結んだ。研究内容の詳細は未公表だが、2種類の異なるプロジェクトが含まれており、スクリーニングのための高度に絞り込まれた化合物ライブラリーがすべてのデータとともに山ノ内製薬に提供される。今回の受注金額の中には、研究費用と一定の里程標に対する支払い、プロジェクト期間中の化合物開発に関するロイヤリティーが含まれている。

 1999.08.16−住商エレクトロニクスのインターネット関連事業の戦略子会社として新会社「サイネックス」が設立された。科学者・技術者を対象に、世界中の1,600社/6,500本にのぼる専門的なソフトウエアを提供するサイバーモール“ネットサイエンス”を運営していく。緒方昭一社長(住商エレクトロニクス専務を兼任)は、「インターネット時代にeコマースのノウハウを確立することは、グループとして21世紀にさらなる発展を遂げるためにも欠かせない要件だ。不特定多数の消費者を相手にしたショッピングモールはまだまだリスクが大きいが、ネットサイエンスはターゲットが明確であり、大手が簡単に入り込めないニッチなマーケットを対象にしているという意味で成功の確率は高いと確信している。将来的には、グループの柱となるような事業に育てたい」と話す。

 1999.08.19−富士通九州システムエンジニアリング(略称・FQS、柴田善次郎社長)は、富士通の分子軌道法計算プログラム「MOPAC2000」を、加ハイパーキューブ社が開発した分子モデリングシステム「HyperChem」と統合するための連携ソフトを開発、9月から全世界で販売を開始する。とくに、高分子化合物やたん白質の電子状態を解析し、それをグラフィック表示することが初めて可能になった。連携ソフト自体は4万円(教育向け2万円)と低価格で、同社ではこの機会にHyperChemの販売権も取得し、セット販売も推進していく。

 1999.08.24−米国のコンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーであるウエーブファンクション社は、同じくCCSベンダーの米シュレーディンガー社と提携し、シュレーディンガーが開発した分子軌道法プログラムを組み入れたウィンドウズ版統合CCS「TITAN」(商品名)を開発した。国内では、総代理店のCRC総合研究所を通して販売を開始する。分子軌道法は計算負荷が高いため、適用が低分子の有機化合物に限られる場合が多いが、TITANは非経験的な ab-initio 計算で大きな分子を扱え、計算化学のプロから実験研究者、教育向けまで幅広い応用が可能な点が特徴。価格は民間120万円、政府機関100万円、大学25万円。

 1999.08.26−新薬開発を支援するコンピューターケミストリーシステム(CCS)ベンダーのCTCラボラトリーシステムズ(CTCLS)は、バイオインフォマティクス分野に進出し、遺伝子関連の統合データベース(DB)システムから、プロテオーム(全たん白質)やたん白質立体構造のデータサービスまで、製品体系を一気に整えた。いずれも欧米で評価と実績の高いシステムで、遺伝子およびバイオテクノロジー研究に必要な先端的な機能を提供する。とくに、独ライオン・バイオサイエンス社の「BioSCOUT」は数100種類にのぼる世界中の遺伝子関連DBをインハウスで自動的に統合し、トータルな研究環境を実現する機能を備えており、国内でも関心が高まると期待される。

 1999.08.31−サン・マイクロシステムズは、コンピューターケミストリーシステム(CCS)大手ベンダーである米MDLインフォメーションシステムズの統合化学情報管理システム「ISIS」(商品名)が、サンの基本ソフト(OS)である「ソラリス」に移植され、今年末に発売されると発表した。ISISは、データベース(DB)エンジンとしてオラクルを採用しているが、そのオラクルがサンのプラットホームを重視していることもあって、今回の移植が実現したものとみられる。

 1999.08.31−菱化システムは、遺伝子発現解析や病気の臨床診断などに使われる米アフィメトリックス社の「ジーンチップ」(商品名)向けの解析ソフト「スティングレー」(同)を発売した。大量の遺伝子の発現データを効率良く扱い、グラフィックを用いてデータの理解を助けることができ、ゲノム情報を利用した新薬開発を支援する。菱化システムは、ジーンチップの国内代理店であるアマシャムファルマシアバイオテクとパートナーシップを組み、共同マーケティングおよび販売活動を進める。適応システムはウィンドウズNT。

 1999.09.30−コンピューターケミストリーシステム(CCS)大手の米モレキュラーシミュレーションズ(MSI)はこのほど、化学や化粧品、食品などの分野で混合物や配合の問題を扱うためのナレッジマネジメント技術の開発を目指すプロジェクト「フォーミュレーションコンソーシアム」をスタートさせた。ユニ・リーバが最初のメンバーになっているほか、年内に4社、来年にかけてさらに10社程度の新メンバーを募っていく。配合設計は職人芸的な色彩が濃く、そうした専門知識がうまく共有されないという問題がある。同コンソーシアムでは、CCS技術と組み合わせて配合設計のための統合的なデザインツールを開発していく。実施期間は2002年6月末まで。


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